「光陰矢のごとし」とはよくいったもので、このコラムを書きながら育てた二人の娘も成人し、同級生の中には早くも結婚し親になった子もいます。必死で子育てをしているときに先輩ママから「大変だけど今が一番楽しい時よ。あっという間に子どもは育つから今を楽しんでね」と言われましたが、忙しくあちこち動き回る日々の中では、ピンと来なかったのも事実です。でも必死で子育てに取り組んだ日々は、振り返ると本当にあっという間でした。そして娘の友人たちのさまざまな人間模様を見るにつけ、自立した責任感のある人に育てるには、何に気を付けて子育てをするべきなのか、考えさせられることが最近よくあるのです。
お稽古事やスポーツをさせ、成績の心配をし、進学先に悩み、親が必死で子育てする中で、親の期待通りにまっすぐ育つ子もいれば、反対方向に進む子もいます。でも親の役割とは、育ちゆく子どもたちの変化に寄り添って、どんなときでも最強の応援団であることかもしれませんね。子どもの人格を尊重し、いざというときお互いに心の拠り所となるような人間関係を築ければ、どれほど人生は豊かになることでしょう。でもそこに至るまでには、親として厳然と教えなければいけない大切なことがあるように思います。
①絶対的なNOを教える
子には絶対に教えなければならない『やってはいけない事』があります。幼い子には身の安全を自分で守る術を教えなければなりません。熱いオーブンやレンジに手を触れたら火傷をすること、車道でふざけたり飛び出さないこと、火遊びも厳禁です。どれも生命の危険に関わることだからです。そして10代になったらドラッグに手を出さないことを徹底して教えなくてはなりません。ほんの出来心や友人からの圧力があったとしても、手を出してからではやめられないのがドラッグの恐ろしいところです。またインターネット上で犯罪や詐欺に巻き込まれないようネットリテラシーを教えたり、さらには性被害者・加害者にならないためのモラルや対処の仕方だって、今の世の中を生き抜く知恵として必要ではないでしょうか。くさびを差さなければならない要所要所では徹底して善悪を教えないと、後悔する結果になってからでは遅いのです。
②無償の愛を与える
子どもの言動によって親が態度をコロコロ変えてみたり、いうことをよく聞いたから、成績がよかったからと『ごほうび』をあげ続けていると、親の承認を得るために態度を変える子どもになってしまいます。時に親子げんかをしても、親が真正面から子どもと向き合って子どもの価値を認めていれば、必ず子どもは親の信頼と愛情を受け止めてまっすぐ成長します。自分自身が大人になって初めて、親にかけてもらった無償の愛情を悟れるようになるから不思議ですね。親の影響は大きく、無意識に親と同じことを我が子にしていたり、逆に意識して反対のことをしてみたり。いかに親との関係性が人格形成に大きな影響を与えているかを実感せざるを得ません。
③本音でぶつかる
親の権威を振りかざしたり、世間体を気にし過ぎたりしていませんか? 子どもを侮ってはいけません。親の偽善や矛盾は敏感に悟るのが子どもです。親だって未熟ですから、言い過ぎや間違った判断をすることだってあるでしょう。そのとき、正直に子どもに謝ることができるかどうか。親自身の人間性が試されているように感じます。
子育ては自分育て。いつかは子どもは親を超えていきます。変化を続けながらも愛情と笑顔あふれる和楽の家庭を築いていきたいですね。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オ
レゴンで学生時代を過ごす。京都女子
大学短期大学部卒業。88年ハワイに
移住し結婚。ハワイの公立校で教育を
受けた長女は現在アメリカ本土で大学
院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌
やウェブでの執筆活動を精力的に行っ
ている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワ
イ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年9月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。