定期検診で訪れたポンズちゃん
日々の生活を大変豊かなものにしてくれるペットたち。そんな彼らからの愛情を受け取る代わり、僕ら飼い主には彼らの健康と幸せを守る義務があると考えています。その義務の中で一番大切といってもいいのが、日々の食事を提供してあげることですよね。(ある少数の猫を除いて)自分で食事を確保することを放棄した現代のペットたちは、完全に飼い主さんに頼りっきりです。
さて、なぜ今回こんな話をしているかといえば、最近とても恐ろしいデータを学会帰りの同僚から聞いたからです。なんと、アメリカでは約半数以上の犬猫が肥満状態にあり、平均して肥満状態のペットたちは、健康的な体重のペットたちに比べて2年ほど寿命が短いという研究データがあるそうです! 僕も実感として、ほぼ毎日「ちょっと体重を下げた方がよいですね」というお話をすることが何度もあります。今回はそんなペットの肥満に関する情報をお伝えしたいと思います。
「肥満気味のペットは平均して2年ほど寿命が短い」というデータを紹介しました。具体的には、余分な脂肪があることで、どういった健康被害が出るのでしょうか? 一番に挙げられるのは、余計な体重のせいで起きる関節への負担でしょう。実際、関節炎で苦しんでいる場合は、まず第一に、最適な体重にすることをオススメしています。さらに、ペットの肥満は、心臓病、糖尿病、呼吸疾患などの慢性的な病気の発症リスクも増加します。肥満による免疫低下やなども合わさって、寿命を縮めることにつながってしまうのでしょう。
ペットの肥満の主な原因は、過剰なカロリー摂取と不十分な運動量です。この中でも、日々摂取するカロリーの影響は計り知れません。残念ながらほとんどの犬猫の肥満は、運動不足よりも、飼い主さんから与えられる愛情(ご飯、おやつ)が必要以上に多過ぎることに起因します。毎日あげるご飯の量は気を付けていても、1日を通して与えられるお菓子や、飼い主さんたちが食べている人間食、他の家族や散歩中に近所の人からもらえるおやつなど、過剰なカロリー摂取の原因はさまざまなところに隠れていて、飼い主さん自身も把握できていない場合も多々あります。
そんな恐ろしいペットの肥満ですが、幸い治療法は理論上は簡単で、適度な運動と食事管理で体重は落ちるはずですよね。忙しい毎日を過ごす飼い主さんたちにとって、今以上にペットの運動をスケジュールに組み込むのは難しいかもしれませんので、やはり1番効果的かつ現実的な治療法は、日々摂取するカロリー量の管理でしょう。ワンちゃんネコちゃんによっては、おねだりがとても上手でついついご飯やおやつをあげ過ぎてしまいますが、もしかかりつけの獣医師さんに愛犬愛猫の体重を減らすよう言われたら、心を鬼にして、本人のためだと思ってしっかりとしたカロリー管理をしてみてください。
Dr. Makoto Sakamoto
獣医師(D.V.M)。大阪府出身。タフツ大学・獣医大学卒業。2023年共同オーナーとして『アイナハイナ・ベタリナリー・クリニック』を開業。
アイナハイナ動物病院
Aina Haina Veterinary Clinic
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年5月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。