来院したオリー君
まだ子犬のオリー君は元気いっぱいで飼い主さん
を困らせています(笑)
前回は、年に2回の定期検診の大切さを説明しました。今回はよく元気なワンちゃんネコちゃんたちにこそ診断される、心雑音について簡単に紹介したいと思います。
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読者の皆さんの中にも、愛犬愛猫が獣医師さんにかかったとき、「心雑音が聞こえますね」と言われたことがあると思います。そもそも心雑音(英語でHeartMurmurと言います)とは、普段は一方通行で流れている血の流れが心臓の中で一部逆流し、聞こえる鼓動音の間に「ザーッ」という雑音が入る状態のことを指します。
心臓の中にある4つの部屋(室)のどこで、どれほどの血量が逆流しているかによって、診察中に聞こえる心雑音の音の大きさと場所が変わります。一般的には、逆流している血量が多いほど聞こえる心雑音の音も大きく、そして原因となる心臓病の進行度も高いと言えます。
主な心雑音の原因としては、以下が挙げられます。
・心臓の室を分けるドアの役割を果たす弁(べん)と呼ばれる部分機能が低下してしまう弁膜症
・心臓の筋肉でできている室の壁に異常をきたしてしまう心筋症
・生まれつき心臓の構造に問題がある病気
・心臓から発生した腫瘍のせいで心雑音が発生
進行度にもよりますが、全く治療を必要としないケースもあれば、他州まで行って手術を受けることをお勧めする場合もあります。
ほとんどのケースは内服薬での予防や治療がメインになりますね。年齢や犬猫の種類によって起こりやすい心臓病が変わります。
僕が診察したときに心雑音を確認した場合、まず飼い主さんに伝えることは、「“心雑音”が聞こえた=今すぐ治療が必要な深刻な病気を抱えているということでは必ずしもない」ということです。
心雑音が確認された際に、僕が1番におすすめするのは、レントゲンやエコー検査など、さらに精密な検査を行い、この心雑音がどれほど心配するべきか、または今できる治療があるかどうかを正確に理解することです。
心臓病の恐ろしいところは、病気の進行度に関係なく心不全や、最悪の場合は突然死などに陥るまで無症状な場合もあるため、早期発見は本当に大切です。
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今後は獣医師にかかったときに、もしも「心雑音が聞こえる」と言われたら、上記のことを思い出して、過度に心配せず、先生の案内にしたがって、精密検査をすることをお勧めします。
Dr. Makoto Sakamoto
獣医師(D.V.M)。大阪府出身。タフツ大学・獣医大学卒業。2023年共同オーナーとして『アイナハイナ・ベタリナリー・クリニック』を開業。
アイナハイナ動物病院
Aina Haina Veterinary Clinic
820 W Hind Dr. Ste, 1224
Honolulu
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診療時間
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※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年2月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。