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第29回【ハワイ州の婚前契約書に関する法律につい て教えてください】

Q. 私はハワイに留学で来ているのですが、1年間交際しているアメリカ人のボーイフレンドと結婚の話が出ています。彼は私に「結婚する前に婚前契約書にサインをしてほしい。アメリカでは当たり前のことで、婚前契約書なしでは結婚できない」と言います。私は彼と結婚したいと思っていますが、このような書類にサインをして良いのでしょうか。

A. 婚前契約書は、結婚をする前に、離婚または死別となった場合、それぞれの財産、収入をどのように分配するのか、あらかじめ決めておくための書類です。
 一般的に婚前契約をした方が良いと言われるケースは、(1)結婚相手より自分が極端に裕福な場合、(2)結婚相手より自分の収入が極端に多い場合、(3)再婚で以前の配偶者との間に子どもがいる場合、(4)結婚相手との年齢差が極端に大きい場合、(5)相手に多額の負債がある場合、(6)自分のビジネスを所有している場合、(7)親や親族からの大きな資産がある場合、などです。ローカルの方同士の婚前契約書のケースはこれらの特別な理由がある場合が多いです。しかし時々日本人の女性と結婚するアメリカ人が大きな財産や収入、または特別な理由もないのに、結婚のために日本人女性に婚前契約書にサインを求めることがあります。
 アメリカ人同士の婚前契約書のケースでは、双方書類を確認して内容がある程度わかっているのが普通ですが、英語が母国語でない日本人の場合、アメリカ人の婚約者が口頭で日本人に伝えていた婚前契約書の内容と実際に書かれている内容が全く異なるといったケースも珍しくありません。
 ですから、ご相談者の場合も、婚前契約書の内容をきちんと理解することが重要になります。「自分は英語で書かれた法律の書類は理解できない」と相手方に説明して、弁護士に相談するべきです。内容がきちんと理解できていないものを、相手方の口頭の説明のも
とにサインをすることは絶対に避けるべきです。多くの婚前契約書は、離婚もしくは死別の場合、何ももらえないという内容になっています。これまで私が婚前契約書を確認して、「何ももらえないという内容になっている」と説明すると、「婚約者に言われた内容と異なる」と言って驚かれる方が何人もいました。そのような内容であれば、法律のもとで得られる権利を踏まえ、お互いが納得できる内容に変更してもらうことを考える必要があります。

サインすると効力を持つので書類内容の完全な理解が必須
 ハワイでは婚前契約の効力に関する法律があり、婚前契約書を無効にするためには、無効だと主張する側が(1)婚前契約書に自主的にサインをしなかった、もしくは(2)婚前契約書の内容がサインした時点で不当な内容で、サインする前に相手方の経済状況の開示を受けなかった、開示の権利を放棄しなかった、そして相手方の財産や経済状況に関して十分な知識がなかったことを証明する必要があります。
 (1)の自主的にサインをしなかったというのは、サインをしないと危害を加えると言われた、多くの人を招待した結婚式が始まる直前にサインをすることを強要された、などの極端な事実が必要になり、ほとんどのケースでは自主的にサインをしたとみなされます。
 (2)の婚前契約書の内容がサインをした時点で不当な内容であったということは証明できる場合はありますが、通常、婚前契約書には相手方の経済状況の開示を受けた、もしくは開示の権利を放棄した、ということが明記されているので、その部分を証明すること
が不可能な場合が多いです。
 ですから、婚前契約書はサインをしたら通常法的効力を持つことになります。これは大切な権利に関する書類です。異国で家庭を持って生活をすることは簡単なことではありません。結婚して何年後、何十年後に離婚したり、死別になったりした場合、何ももらえ
なくてよいのかを考える必要があります。私が扱ったケースでは、交渉を通して100%理想の形ではなくても、お互い納得する形に内容を変更できることが多いですが、まれに全く譲歩をしない相手方もいます。
 ご相談者も、婚前契約書の内容がきちんと理解できないので弁護士に相談してからサインすると伝えて、弁護士に相談することを強く勧めます。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年11月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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