Q. 小学生の子どもが二人いますが、離婚をすることになりました。子どもたちは今は公立校に行っていますが、中学校から私立に行かせる予定で、上の子はその準備も始めていました。また二人ともピアノと空手をずっと習っています。離婚の際、私立の学費や習い事の費用の請求はできるのでしょうか? それからアメリカの大学の費用の分担はどのように決めるのでしょうか?
A. お子さんがいる場合の離婚で必ず決めなければいけない、子どもに関する金銭的なことは(1)養育費(2)子どもはどちらの親の健康保険を使うか(3)健康保険がカバーをしない子どもの医療費の分担方法です。
養育費や子どもの健康保険のように必ず決めなければいけないことではありませんが(決めなくても離婚は成立しますが)、ご相談者のようにお子さんが習い事をしている場合は、通常習い事の費用の分担も決めていきますし、決めるべきです。収入の比率によって70%・30%というような分担にすることもありますし、半々、もしくは片方が100%支払うなど、家庭の経済状況に照らし合わせて決定されます。
また、通常は今子どもがやっている習い事は双方の合意のもとにやらせていると考えます。しかし、離婚後に新しい習い事をやらせたい場合は、二人の親が合意しているのであれば、費用を分担することになります。もし合意がないのであれば、やらせたい側が支払うとする場合が多いです。
離婚後に通う私立校の学費は交渉して条件に入れるべき
ハワイの私立の学校の学費は高額な場合も多いですが、「結婚している間に両親の合意のもと、子どもが私立の学校に行っている場合は、養育費とは別に私立の学費の支払いの分担を決めることができる」というハワイ州の判例があります。こちらも、両親の経済状況に照らし合わせてどのように負担額を分担するか決めることになります。
ご相談者の場合、中学から私立に行かせたいと考えているのであれば、離婚の際にそのことを相手方と交渉し、離婚の条件の中に盛り込むべきです。
またご相談者がおっしゃるように、その他に子どもにかかるお金の分担というと、大学の費用があります。皆さんご存じのように、特にメインランドの大学に行かせる場合は、大学の費用はとても大きな額になることが多いです。費用が大きいこと、そしてご相談者のようにまだ子どもが小さい場合、実際に大学に行く時点で双方の経済状況がどうなっているかわからないので、大学の費用は将来話し合って決め、合意できない場合は裁判所が決めるという内容にすることが多いです。
また、負担の比率を離婚の時点で決めてしまう場合も、メインランドの大学の費用は莫大なものになるので、まだどの大学に行くかわからない場合はハワイ大学のハワイ州に住む学生が支払う学費を上限とすることもよくあります。ハワイ大学の学費を上限としている場合、片方の親だけがメインランドの大学に行かせたいのであれば、その親がハワイ大学の学費を超える分を支払うことになります。
Divorce Decree「離婚判決書」で支払いが義務づけられている習い事の費用や私立の学費、大学の費用をどちらかが立て替える場合、支払い額の証明になる請求書、レシート、支払い済みのチェックなどをきちんとそろえて、相手方に支払いの請求をすることが大切になります。
それでも支払わない場合は、まず弁護士を通して相手方に期限を付けた手紙を送り、Divorce Decree「離婚判決書」で定められた支払いをするようにリクエストします。そして期限までに支払わない場合は、裁判所で申し立てをして、弁護士費用の支払いのリクエストもするということを伝えます。相手方に支払い能力があるのであれば、かなりの割合のケースで、このような手紙を通して解決することができます。
しかし、そのような手紙を送っても相手方が決められたことをやらない場合は、裁判所の介入が必要になります。そして、裁判所は「決められたことはやらなければいけない」と命じます。弁護士費用の支払いも多くのケースで命じられます。ですからDivorce Decree「離婚判決書」の時点できちんとした取り決めをすることが重要になります。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。
宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年6月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。