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第14回【暴力を振るう夫と離婚を決意。自分と子どもの安全のためにできることはありますか?】

Q. アメリカ人の夫と10 年前に結婚し、8歳の娘がいます。普段は良い人ですが、お酒を飲んだり私が言い返したりすると、私に暴力を振るうことがあります。先日は初めて子どもの前でひどく殴られました。子どもは怯えて泣き、ようやく離婚を決意しました。離婚したいと伝えた場合、よりひどい仕打ちを受ける可能性があります。私に何かできることはありますか?

A. ご相談者とお子さんの安全を守るためにTRO「Temporary Restraining Order」と呼ばれる一時的接近禁止命令の申し立てができます。家族や同居人、現在、もしくは元交際相手などに対するTRO は家庭裁判所の管轄になります。
 TRO の申し立てをするためには、家庭裁判所のTRO ユニットに電話をして状況を説明します。家庭裁判所のTROユニットの電話番号は下記です。

・オアフ島 808-538-5959
・マウイ島、モロカイ島、ラナイ島 808-244-2706
・ハワイ島 808-969-7798
・カウアイ島 808-482-2330

 申請の際には、裁判所のTRO の係員が申立書の記入の仕方を教えてくれます。そして記入した申立書に家庭裁判所の裁判官が目を通して、TRO を発令するかしないかを決定します。
 TRO は申立人の記入した内容のみに基づいて、裁判所が認めるか認めないかを決定します。ですからTRO が発令された場合、裁判所はTRO の申立てから15 日以内に双方の言い分を聞くために裁判所でヒアリング(審問)を行い、Order for Protection と呼ばれる一時的でない接近禁止命令が必要かどうか決定します。

ヒアリングにより接近禁止命令が必要かどうかを決定

ヒアリングには、申立人、そして相手方双方が出廷を命じられます。そこで、申立人はTRO の申立書に記載した家庭内暴力が起こったことに関する証言を行い、証拠を提示します。また、相手方は申立書の記載事項に応答する機会が与えられ、それに関する証言を行い、証拠を提示します。証拠として有効となるのは、証人の証言、電子メール、テキストメッセージ、写真、診断書や警察調書などさまざまです。裁判所で証拠として使うためには、自分用、裁判所用、そして相手方用に3部コピーを準備する必要があります。
 英語が母国語でなく、裁判所で通訳が必要な場合、通訳をリクエストできます。また、TRO のヒアリングには弁護士を雇って、弁護士と一緒に出廷することができますが、弁護士なしで出廷することも可能です。相手方が弁護士をつけている場合は、できる限りご自身も弁護士を雇う方がよいでしょう。ヒアリングの日に、自分は弁護士なしで、相手に弁護士がいると分かった場合、弁護人を雇うためヒアリングの期日を延期してもらうよう裁判官に求めることができます。多くの場合、裁判所は一度は延期を認める判断をしますが、必ず延期されることが保証されているわけではありません。裁判官が延期のリクエストを却下した場合、自分で家庭内暴力の証拠を提示し、証言する必要があります。
 ヒアリングでは、裁判官が接近禁止命令が必要かどうか決定します。接近禁止命令の期間は、裁判官が妥当かつ必要と判断した長さになり、数カ月の場合も、20 年に及ぶこともあります。
 またご相談者の場合、TRO の申し立てにお子さんを含めることになりますが、子どもが接近禁止命令に入るべきか、そして一時的な親権および養育権(監護権とも呼ばれる)をどちらに与えるか、第三者の監視付きの面会が必要かなどの決定も裁判所が行うことになります。離婚になると分かっている場合は、一時的な子どもに関する命令がTRO のケースで発令されても、それは離婚のケースで最終的に判断されることになります。また、子どもに対しての暴力がなく、相手方と子どもが一緒にいても危険ではないという判断がなされた場合は、子どもは接近禁止命令の対象から抜け、子どもの親権、養育権、面会のスケジュールなどは離婚のケースで決定をすることになります。
 TRO、そして接近禁止命令が出た場合、書類を常に携帯し、違反行為があった場合は直ちに 911 に電話して警察に通報しなければなりません。また、申立人が相手に連絡を取ることも禁じられています。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年8月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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