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第13回【離婚の取り決めを相手方が守らない場合、何かできることはありますか?】

Q. アメリカ人の夫と5年前に離婚しました。元夫は警察官で、数カ月前に退職したようです。離婚の取り決めでは、元夫が私に離婚成立後から1年以内に財産分与として5 万ドル支払い、また、退職した際は州から支払われる月々の年金の30%を私に支払うことになっていますが、どちらも受け取っていません。このような状況で私にできることはあれば教えてください。

A. Divorce Decree(離婚判決書)で決められたことを相手方が守らない場合、裁判所に戻って、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」と呼ばれる執行の申し立てをすることができます。その申し立てにかかった弁護士費用のリクエストをすることもできます。
 通常は、まず相手方に期限を付けた手紙を送り、Divorce Decree(離婚判決書)で定められた支払いをするようにリクエストします。そして期限までに支払わない場合は、モーション・トゥー・エンフォース「Motion toEnforce」を裁判所でファイルして、弁護士費用の支払いのリクエストもすることを伝えます。相手方に支払い能力があるのであれば、かなりの割合のケースで、解決することができます。
 そのような手紙を送っても相手方が決められたことをやらない場合は、裁判所の介入が必要になります。そして、裁判所は決められたことはやらなければいけないと命じます。弁護士費用の支払いも多くのケースで命じられます。
 しかし、これらの人は一度裁判所に命じられたことをやっていないので、再度命令が出てもやらない可能性があります。そうなると裁判所の支払命令を再度得ても、実際にお金は支払われないということになってしまいます。
 ご相談者の場合はもう遅いのですが、離婚の取り決めをする際は、可能な限り必ず支払いがなされる形にすること(家の名義変更と同時に支払いをしてもらう、支払う税金も考慮に入れて401K からの支払いにするなど)が大事になります。

州からの年金は、直接州から支払いを受けることも可能

ご相談者の元夫が1年以内に支払うことになっていた5 万ドルですが、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」をする時点で、相手方に財産があるのであれば、その財産からの支払いを裁判所に命じてもらうことができます。何の財産もないが、収入がある場合は、月々分割での支払いも選択肢の一つになります。ご相談者の元夫には州からの年金がありますが、もし相手方に財産も収入もない場合、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」にかかる弁護士費用を考えると、その申し立てをすることが金銭的に意味があるのか、考える必要があります。
 州から支払われる月々の年金の30%に関しては、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」を通して、州から直接支払いを受ける形にすることができます。ハワイ州や郡に勤めて条件を満たした人がもらうことのできる年金はエンプロイーリタイアメントシステム「Employees’ Retirement System (ERS)」といいます。
 2020 年6 月までは、離婚の財産分与で、元配偶者がERS の年金の一部をもらう場合、ハワイ州や郡に勤めていた人がリタイア後に毎月直接元配偶者にチェックなどで支払う必要があり、元配偶者が支払いをしてもらえないというケースが珍しくありませんでした。2020年7月からは、ハワイドメスティックリレーションズオーダー「Hawaii Domestic Relations Order」と呼ばれる裁判所でファイルする書類を通して、ERS が直接元配偶者に支払いをすることが可能になりました。
 ご相談者の場合、まずは相手方にハワイドメスティックリレーションズオーダー「Hawaii Domestic Relations Order」を通しての支払いをリクエストして、応じるというのであれば、必要な書類を作成してサインをする形で終わらせることができます。応じない場合は、モーション・トゥー・エンフォース「Motion to Enforce」の申し立てをして、裁判所に相手方が月々の年金の30%を支払っていないことを説明し、ハワイドメスティックリレーションズオーダー「Hawaii Domestic RelationsOrder」を通しての支払いをさせてほしいとリクエストすることができます。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年7月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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