Q. アメリカ人の夫と離婚することになりました。子どものことや、財産分与は話し合って解決できそうですが、細かいことがわかりません。離婚後の私と子どものラストネームはどうなりますか? また今までジョイントでファイルしていたタックスリターンは、離婚をしても今年度の申告はジョイントでできますか? それから日本での離婚手続きはどう進めればよいでしょうか?
A. 最初のご質問、離婚後の名字は、ハワイで離婚を通して子どものラストネームを変更することはめったにありませんし、お子さんの名前を変更したいという話が出ることもめったにありません。しかし、離婚に伴ってまだ小さなお子さんと日本に帰国されるケースで、相手方の同意のもと、子どものラストネームを母親の旧姓に変更することをDivorceDecree「離婚判決書」に記載したことはいくつかありました。
当事者のラストネームに関しては、Divorce Decree「離婚判決」に結婚後のラストネームをキープするか、旧姓に戻すかを記載します。これはご自身の意向で決めることができ、配偶者には意見を言う権利はありません。私が扱った離婚のケースでは、「子どもと同じラストネームでいたい」、「身分証明書や銀行の名義など変更するのが大変」、「結婚後のラストネームが自分の名前のようになっている」などの理由で、旧姓には戻さないことにした方がどちらかといえば多かったように思います。
また、離婚の時点でラストネームをどうするか決めかねている場合は、後日州の副知事のオフィス「Office of the Lieutenant Governor」を通して、名前の変更の手続きをすることもできます。
次にタックスリターンに関するご質問ですが、タックスリターンをジョイントでファイルするには、その年の12月31 日の時点で婚姻関係にある必要があります。例えば、2023 年度分のタックスリターンをジョイントでファイルするには、2023 年12 月31 日に婚姻関係が続いている必要があり、2023 年度のタックスリターンをジョイントでファイルすることが重要であれば、離婚は2024 年1 月以降にしなければいけないということになります。ですから、タックスリターンのファイルのために、年明けまでDivorce Decree「離婚判決書」を裁判所に提出しないケースは珍しいことではありません。
日本の離婚手続きは、総領事館で書類を提出します。
最後に日本での離婚手続きに関しては、在ホノルル日本国総領事館を通して行います。在ホノルル日本国総領事館のホームページ(https://www.honolulu.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/koseki03.html) に手続きの情報が記載されています。日本人と外国人がハワイ州の方式により離婚した場合は、離婚届書、戸籍謄本、日本のパスポート、米国での滞在資格が確認できる書類、離婚判決謄本の和訳文、そしてDivorce Decree「離婚判決書」の謄本「certified copy」が必要になります。なお和訳文は、Divorce Decree「離婚判決書」全部を翻訳する必要はありません。領事館のフォームを使って、原告、被告の氏名、判決の確定日、子どもの親権などを記入することになるので、ご自分でできる方がほとんどです。
Divorce Decree「離婚判決書」の謄本「certified copy」に関しては、一つ注意事項があります。ハワイ州の家庭裁判所は2022 年の4 月下旬に電子ファイルのシステムを始めたので、現在弁護士はほぼ全ての書類を裁判所のシステムからダウンロードして入手します。この形でファイルされた謄本「certified copy」の書類には、原本と相違がないということが赤字で記載されます。電子ファイルのシステムを始める前は、謄本「certified copy」の書類はエンボス印という、原本と相違ないことが紙に浮き彫りされる形でなされていました。領事館のホームページに書かれているように、ハワイ州での離婚を日本の戸籍に反映させるためには、電子ファイルでの謄本「certified copy」ではなく、エンボス印のある謄本「certified copy」が必要です。エンボス印は、ダウンタウンの裁判所、もしくはカポレイの家庭裁判所に行って、電子ファイルの形でファイルされたDivorce Decree「離婚判決書」にエンボス印を入れてもらう必要があります。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。
宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年12月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。