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第17回【家庭裁判所の決定に納得できない場合、何かできることはありますか?】

Q. アメリカ人の夫が離婚訴訟を起こしました。お互い弁護士を雇って調停にも参加しましたが合意に至らず、双方莫大な弁護士費用を払って裁判をしました。裁判では、子どもの親権、スケジュール、アリモニー、養育費の金額、財産分与などを争いました。数日前ようやく裁判所の決定が出ましたが、私は判決内容に納得できません。できることがあれば教えてください。

A. 家庭裁判所の判決に不服がある場合、ハワイ州高等裁判所(ハワイ州中間上訴裁判所「Hawaii Intermediate Court of Appeals」)に控訴することができます。
 しかし、控訴するためには、家庭裁判所が事実誤認をした、もしくは法律を間違った形で適用した、などを示す必要があります。控訴するという通知は通常判決後30日以内に裁判所でファイルする必要があります。基本的に高等裁判所は家庭裁判所で採用された証拠とファイルされた書類、双方が提出する書面(ブリーフ)に基づいて、家庭裁判所の決定が正しかったかを判断します。高等裁判所が必要だとみなした場合は、口頭弁論がスケジュールされることもありますが、ほとんどの控訴審は口頭弁論なしで進みます。
 さらにハワイ州の高等裁判所(ハワイ州中間上訴裁判所「Hawaii Intermediate Court of Appeals」)の決定に不服がある場合は、ハワイ州最高裁判所 (Hawaii Supreme Court) に上告をすることができます。

控訴や上告で長い年月をかけるより当事者で話し合いを 
 家庭裁判所では弁護士を雇わず離婚訴訟を行う当事者もいます。しかし、控訴審や上告審では裁判所の規則に従ってさまざまな書類を提出する必要があり、弁護士を雇わずに控訴・上告するのは、容易なことではありません。
 そしてハワイの控訴審は、特別な理由がない限り判断が下されるまで数年かかることも珍しくありません。また、特別な理由がない限り、その間は家庭裁判所での決定が有効となるので、再度多額の費用と時間をかけて控訴するべきなのかどうかを考える必要があります。例えば、子どもと過ごすスケジュールに不服があった場合、控訴して決定が覆されたとしても、それは数年後で、その時点での状況にはもう当てはまらないということもあり得ます。
 家庭裁判所は家族や親子間の問題を扱うので、法律が100%厳格に適用されるというより、家族、子どもにとって何が最善かを基準に判断が下される場合があり、裁判官は裁判で当事者や証人が証言する様子を見ているので、その信ぴょう性なども踏まえて決定がなされます。一方、控訴審では通常書類や裁判記録に基づいて決定がなされるので、振る舞いや話し方のトーンなど、高等裁判所の裁判官に伝わらない部分があります。
 私はロースクール卒業後、1年間ハワイ州最高裁判所で裁判官の下で働いていたので、法律を厳格に適用して、家庭裁判所での審理を差し戻す決定を何度も見ました。しかし、実際に家族法の弁護士として仕事をすると、何年も前の離婚訴訟を少しの法律のほころびのために差し戻し、やり直しの裁判をさせることが、当事者家族にとって大変な負担になることがよくわかります。以前所属していた法律事務所で担当した案件で、2012 年に裁判を経て離婚後、妻の方が控訴し、2016 年に高等裁判所から差し戻しになり、2020 年に差し戻しの裁判が終わり決定が出た後、今度は夫が控訴して、いまだに高等裁判所からの決定が出ていないというケースがあります。この当事者は子どもがなく短い結婚だったので、結婚の長さより長い年月裁判所で争い、莫大な弁護士費用を支払っていることになります。離婚を和解していれば、このようなことにはなりませんでした。
 ご相談者の場合、もう裁判で争っているのでこのアドバイスは当てはまりませんが、家族のことを一番わかっているのは当事者です。もちろん相手方が理不尽な主張を曲げない場合、裁判所で争わなければならないこともあります。また、和解するためには、双方が妥協をする必要があります。しかし、可能であれば家族のことをほぼ知らない家庭裁判所や高等裁判所、最高裁判所に判断を委ねるよりも、自分たちでの話し合いや調停で解決をすることが当事者のためになると考えます。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年11月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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