Q. 結婚15 年になるアメリカ人の夫が、私と小学生の二人の子どもを置いて家を出て行きました。お金がもったいないので弁護士を雇わずに離婚しようと言います。私も離婚は受け入れていますが、夫の提示する条件に納得できません。このような場合、離婚が解決するまでの養育費やその他の金銭的サポートを裁判所にリクエストすることはできますか?
A. 離婚が解決するまでの、当面の子どもの親権「legal custody」、養育権(監護権)「physical custody」、養育費などに関して、裁判所に申し立てをすることは可能です。モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」と呼ばれ、ハワイ州の裁判所のウェブサイト(https://www.courts.state.hi.us/self-help/courts/forms/oahu/family_court_forms) でも必要なフォームを入手できます。
この申し立ての中で、当面の子どもの親権「legal custody」、養育権(監護権)「physical custody」、養育費、アリモニー(扶養料)、弁護士費用の支払い、その他の支払い(家のローン、医療費、車の保険、健康保険料など)に関する裁判所の決定をリクエストすることができます。
それらをリクエストをする場合、オアフ島の家庭裁判所では、申立人が、インカム・アンド・エクスペンス・ステートメント「Income and Expense Statement」という収入と支出の報告書、そしてアセット・アンド・デット・ステートメント「Asset and Debt
Statement」という財産と負債の報告書を、申し立てと一緒に提出することが義務付けられています。
ヒアリングまでに書類と証拠の提出や相手との交換が必要
必要な書類を全て記入して、申し立てを裁判所でファイルをした後、裁判所がヒアリングの日程をスケジュールします。オアフ島の裁判所では、モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」のヒアリングは現在水曜日の午後に開かれることになっています。なお、ヒアリングの日程は1カ月から2カ月先になることが多いです。英語が母国語でない場合、事前に裁判所に通訳の提供をリクエストできます。
ヒアリングの日程が確定したら、相手方に、申し立てとヒアリングのスケジュールの書類を定められた期限までに送達します。通常、ヒアリングの前週の木曜日までに、給与明細、W-2フォーム、もしくはタックスリターン、そしてインカム・アンド・エクスペンス・ステートメント「Income and Expense Statement」とアセット・アンド・デット・ステートメント「Asset and Debt Statement」の書類を、相手方と交換することが義務付けられています。また、ヒアリングの48 時間前までに、ヒアリングで使う証拠書類を交換することも義務付けられています。
それぞれの裁判官は何件ものケースを水曜日の午後に担当することになっています。裁判官は通常、合意のあるケースのヒアリングを先に行います。合意がない場合、長時間待つことになりますし、裁判官はそれぞれのヒアリングに多くの時間を割くことができません。数十分という時間で双方が全ての細かい主張をすることはとても難しいです。
このような理由から、可能であれば裁判所で争うのではなく、まずは前回ご説明したメディエーション(調停)のプロセスを使って、当面の子どもに関する取り決めや金銭的な取り決めの話し合いをすることが多いです。また、モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」をファイルして裁判所に行った場合も、裁判所がまずメディエーション(調停)をするべきだと判断をして、そのように命じられることも珍しくありません。
しかし、離婚が成立するまでの、子どもと過ごす当面のスケジュールや養育費、その他の金銭面の分担に関して、相手方がまったく協力的でない場合や理不尽な主張を続ける場合は、裁判所の介入が必要になり、モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ
「Motion for Pre-Decree Relief」の手続きを進めることになります。その手続きを、弁護士なしで行うことは可能ですが、簡単なプロセスではないと言えます。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。
宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年7月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。