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第40回【不倫による離婚でも共同親権になりますか?また、低収入は離婚争いで不利ですか?】

Q. アメリカ人との間に小学生の子どもが二人います。夫は不倫をしており、離婚を切り出されました。夫は共同親権がほしいと言い、私が英語をあまり話せず、収入も少ないので裁判所で争ったら、私は親権をもらえないだろうと言います。夫は不規則な仕事で、子どもの世話は私が主にしてきましたが、悪い父親ではありません。ハワイの裁判所ではどう判断が下されますか?

A. 
子どものいる夫婦がハワイで離婚する場合、その親権が争点になります。親権にはリーガルカストディ「legal custody」とフィジカルカストディ「physical custody」の2種類があり、リーガルカストディ
はお子さんに関する決定をする権利、フィジカルカストディはお子さんと主に一緒に住む権利です。どちらも共同、もしくは単独という形を取ることができます。裁判所は子どもにとって何が最善かということを基準に決めていきます。また、片方の親によほどの問題がない限り、基本的に両親ともが子どもに関わっていくことが子どもにとって良いことだという見方をします。
 ですから、どちらの親もリーガルカストディを持つことを望む場合、多くが共同になります。その場合子どもに関する決定は、両親の合意のもとで行わなければなりません。現在住んでいる島の外への引っ越し、学校や病院の選択、パスポートの更新、子どもの運転免許の申請などがその例です。
 フィジカルカストディは双方の親が子どもと過ごすスケジュールが50/50、もしくは50/50 に極めて近い場合に共同となります。片方の親が単独でフィジカルカストディを持つ場合は、もう一方の親が訪問権「ビジテーション」を与えられます。しかし、日本での月1 回数時間というような限定的なものではなく、週に何度か宿泊というようなスケジュールになるのが普通です。
 先ほども述べたように、裁判所は、リーガルカストディ、フィジカルカストディ、ビジテーションを子どもにとって何が最善かということを基に決定します。英語があまり話せないことや、収入が少ないことは通常問題になりません。英語が一言も喋れなかったり、全く収入がなかったりしても、子どもにとって良い親であることは可能だからです。同じように、夫の不倫やそれが原因で離婚に至ったことも、不倫相手が危険人物などでない限り、直接影響はほぼないといえます。しかし、子どもを新しいパートナーに会わせるのは、時間をかけて子どもの気持ちや様子を考えて慎重に行うべきだ、という考え方をします。
 ご相談者の夫は基本的に良い父親とのことなので、リーガルカストディは共同になるでしょう。夫の仕事のスケジュールが不規則でも、半々のスケジュールやそれに近いスケジュールで子どもの世話を問題なくすることが可であれば、フィジカルカストディも共同になり、それが難しい場合は、ご相談者が単独でフィジカルカストディを持ち、子どもの年齢や状況、それぞれの親の状況を踏まえて、子どもにとって良いビジテーションのスケジュールを考えることになります。

合意できない場合、調査官を通し、それでも不可なら裁判
 離婚をする夫婦が子どものリーガルカストディ、フィジカルカストディ、ビジテーションに関して合意できない場合、多くのケースで裁判所はまずカスタディエバリュエーター「Custody Evaluator」、もしくはファクトファインダー「Fact Finder」と呼ばれる調査官を任命します。調査官は、両親、子ども、その他の両親や子どもの関係者(学校、主治医、同居する家族など)と面接して、必要な書類に目を通し、それぞれの家を子どもがいるときに訪問します。その上で裁判所に提出するリポートを作成します。通常、裁判所そして双方の弁護士が信頼する調査官を選ぶので、リポートの内容を見て、裁判ではこうなるであろうと予測を立てることができ、リポートの内容を使って合意に至ることができる場合が多いです。しかし、合意に至らない場合、裁判になり、裁判所が決定を下すことになります。
 子どもの親権を争う裁判には多額の弁護士費用がかかり、カスタディエバリュエーター「Custody Evaluator」、もしくはファクトファインダー「Fact Finder」にも支払いをします。しかし、収入制限を満たす場合、裁判所が無料の調査官を提供する場合もあります。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年10月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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