ハワイの公立校に小~高校まで子どもを通わせてみて、中~高校かけての宿題の量と内容が日本とは全く違うことに驚きました。
まず小学校については、低学年までは、日本と同様にスペリングや算数の計算プリントなどの宿題が出ます。宿題に費やす時間の目安としては、学年×10分(1年生は10分、2年生は20分など)と言われることが多いですが、実際はもう少し時間がかかるように思います。高学年になるとプロジェクトが出てきて、もっと時間を取られることが増えます。社会科では歴史上の人物について調べてレポートにまとめたり、理科では仮説を立てて実験・証明するプロジェクトだったり、小学生にはそれなりにチャレンジングな内容です。日本では夏休みに自由研究をさせることが多いですが、それが通常の学期内で行われている感じでしょうか。
そして中・高校になると、プロジェクトが複雑になってくる上、通常の宿題が増えます。クラブ活動を終えてから取りかかると、夜中までかかる日も少なくありません。また宿題の提出が成績にも一定の割合で反映されるので、提出期限を守ることも大事なポイントです。高校までが義務教育のアメリカでは、公立校に通っていると、いわゆる『受験』を経験することがありません。大学進学にあたっては、SATやACTといった全国共通試験がありますが、日本とは合否判定のシステムが全く違うので、1点でも多く点数を上げるためにしのぎを削る受験勉強をする必要がありません。その代りに学校の宿題やテスト勉強で毎日手一杯になるのがアメリカの高校生の現実です。塾での受験勉強が学校の勉強より優先になっている日本と比べると、ある意味健全かもしれませんね。
その代わり、大学進学の際に課外活動の評価が合否に大きく影響を及ぼします。アメリカでは人格形成が課外活動で培われるという意識が高いので、人物評価の上で課外活動が注視されます。それゆえ高校生になるとスポーツやクラブ活動、ボランティア活動などに、どの生徒も積極的に取り組みます。スポーツはシーズン制なので複数のスポーツを掛け持ちする生徒も珍しくなく、生徒会やボランティア活動などにも並行して参加しています。とても忙しいので、学校の宿題と課外活動を両立させる時間管理が重要になってきます。
時間管理の方法
課外活動と宿題をうまく両立させている生徒を見ていると、簡単な宿題は授業中や休み時間に済ませているようです。例えば数学なら、授業中に解けなかった質問は宿題になったりしますが、そうした小さな宿題はなるべく学校で片付け、まとまった時間が必要なものだけを家でするようにしているのです。学年が上がるほど、週末もスポーツやボランティア活動があり、その合間に宿題をしないと間に合わなくなってくるので、週末に家族団欒の時間を確保するのが難しくなってきます。さらにティーンエイジャーの仲間入りで反抗期真っ盛りですから、親が期待するほどうまく事は運びません。期限ギリギリまで放っておいて期限前夜に悲惨な状態になったり、はたまた、完全にあきらめてしまって宿題を提出しなかったり…。
小学生の頃に宿題を済ませてから遊ぶ習慣を身に付けることができればベストですが、中学生からはオンラインで親が成績の進捗状況を把握できるようになるので、心配な場合はモニターをして、手遅れになる前に本人に注意したり、先生と連携を取ってフォローする必要があります。小さい頃から小さな成功体験を積み重ね、目の前の課題に前向きに取り組む姿勢を身に付けさせたいですね。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年2月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。