見たこともない風景や神秘的な自然現象、なかなかお目にかかれない動物など、アメリカにはアメージングなモノがいっぱい! 今回は、ハワイから行きやすい西海岸で出会える、「これはすごい!」「一度は見てみたい!」トピックをご紹介します。全コンプリートを目指してみてはいかが!?
※今回ご紹介しているスポットは、2025年2月18日時点で南カリフォルニアで起こった一連の山火事による直接的な被害は受けていません。スポット③⑤⑥は西海岸の各所で見られますが、被災地域には近づかないようご注意ください。安全に旅をして地域経済の復興を支援しましょう。
ナビゲートしてくれるのは…
芦刈いづみさん(写真左・本文執筆)
メディア&PR会社Seven Seas Media代表。ライターとしてアメリカの文化や旅の情報も執筆。
https://linktr.ee/v_izumi123_v
Tak S. Itomiさん(写真右・撮影)
Tak S. Itomi Photography and Design代表。フォトグラファー。旅を通して出会った風景、人々、文化に関する講演活動などにも携わる。
ロサンゼルスの山の方から流れてきたSan Gabriel Riverは、ロングビーチで海に出ます。その河口周辺では冬の間、絶滅危惧種に指定されているアオウミガメを見ることができます。本来は熱帯地域に生息するウミガメですが、この辺りは発電所から出る温かい水があるため寄ってくるのだそう。都会の川で絶滅危惧種の生き物が見られることはとても珍しく、海洋学者の研究対象にもなっています。
ベストロケーション:Los Cerritos Wetlands, CA
Torrey Pineは、カリフォルニアに生息するとても珍しい松の一種。北アメリカで見られるのはたった2カ所! サンディエゴ北のTorrey Pines State Reserveと、ロサンゼルスの北チャネル諸島の一つ、Santa Rosa Islandです。この松は海風や乾燥した土壌に耐えるため、幹は折れ曲がり、枝は大きく広がっています。また、種を保護するために松ぼっくりが硬いのも特徴の一つです。
ベストロケーション:Torrey Pines State Natural Reserve/Santa Rosa Island
Torrey Pineは約1万株ほどが自生していて、そのうち大部分(およそ8000株)がTorrey Pines State Natural Reserveに、残りがSanta Roas Islandに自生しているとされています
ハワイでも毎年ニュースとなっているKing Tideは、1年で最も潮位が高くなる現象です。これは通常、冬の間、地球と月、太陽の引力が最も強く働く新月や満月の時期に起こります。ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州のどこの海岸沿いでも見ることができます。特にピアの下や、ビーチ沿いに家があるところなどに行くと、見たことがないほど上の方まで海面が上がってきていることが分かります。州ごとに「King Tide Project」のサイトがあり、レポートや写真を見ることができます。観察場所はこれらのサイトをチェックして決めるといいでしょう。
ベストロケーション:ピアがあるところやキャナルになっているエリアなど
https://www.coastal.ca.gov/kingtides/
https://www.oregonkingtides.net/
同じくロングビーチのCalm Beach。海面上昇で砂浜がすっかり水没してしまっています
絶滅危惧種に指定されているMonarch Butterflyはオレンジと黒の模様を持つ蝶で、小さい体で驚くほど長距離を移動することで知られています。植物のミルクウィード(ハワイではクラウンフラワー)を主食とし、米本土では夏の間、それらが良く育つアメリカ北部やカナダに生息して生殖活動を行います。そして冬の時期(10月下旬〜2月頃)、暖かいカリフォルニアやメキシコを目指して飛来するのですが、どういうわけか、ここPismo Beachに密集するんです!
ベストロケーション:Pismo Beach Monarch Butterfly Grove, CA
http://www.monarchbutterfly.
自然保護公園のMonarch Butterfly Groveで観察した蝶たち。木々の上をひらひら舞うたくさんの蝶は、肉眼で見るととても美しい光景ですよ!
Grunion Runは、Grunionというサバの一種の小さな銀色の魚が、満月や新月の後の夜、大潮のタイミングで砂浜に上陸して産卵する現象。南カリフォルニアの砂浜で、春から夏に見られます。いろいろな所で見られますが、ロサンゼルス近郊のSan PedroにあるCabrillo Marine Aquariumが、ベストタイミングに合わせてGrunion Runを見るイベントを開催しています。
ベストロケーション:Cabrillo Marine Aquarium, CA
https://cma.recreation.parks.lacity.gov/
文字通り走るようなすごい勢いで砂浜を移動するGrunionたち。生命の神秘を感じます
Cabrillo Marine Aquariumでは卵を孵化させるイベントも。手でふたをした卵の入ったコップをゆっくり回すと卵が孵化します
カリフォルニアの海で観測できる、春から夏にかけて海が青く光るという珍しい現象です。さまざまな要因で起こりますが、カリフォルニアでは夜間の海岸で発光するプランクトンが影響しています。春から夏にかけて見られることが多いですが、2024年は秋にも観測できました。1日や2日で終わる現象ではなく、数週間から2カ月ほども続き、場所も日によって違うので、SNSなどを注意してチェックしておくと観測しやすいですよ!
ベストロケーション:カリフォルニア州の海岸
青白く光る波が次々に寄せてくる眺めは、ほんとうに神秘的! 写真は2020年5月にSan Clemente Lifeguard Station前で遭遇したBioluminescence
ゾウアザラシは、繁殖や毛の生え替わりの時期に、集団で海岸に集まる習性があります。巨体が海岸に集結する光景はまさに圧巻! この光景が見られるのが、セントラルカリフォルニアのPiedras Blancasや北カリフォルニアのAño Nuevo State Park。冬から春にかけては繁殖シーズンで、オスが縄張り争いをしてメスを引き寄せます。その際にオス同士の激しい戦いが見られ、大きな鳴き声が遠くからでも聞こえてくるほど。春から夏にかけては毛の生え替わりの時期なので、ゾウアザラシたちは比較的のんびりしています。Piedras Blancasにはウェブカメラが設置されているので、訪れる前にチェックするのがおすすめです。
ベストロケーション:Piedras Blancas Elephant Seal Vista Point / Año Nuevo State Park
Elephant Seal Vista Pointに集まったゾウアザラシたち。夏の時期なのでのんびり寝そべっていました(2022年8月)
Gray Whale(コククジラ)は毎年、北極圏と暖かいメキシコの海を往復することで知られています。その移動距離はなんと約1万6000〜2万キロメートル!! クジラが移動する目的は、繁殖と子育て。暖かくて浅いメキシコのラグーンは、敵に邪魔されることなく、出産と子育てをするために最適なのです。カリフォルニア沿岸では特に海岸近くをクジラが通るため、陸地からでもクジラが群れで移動する様子を観察することができます。
ベストロケーション:Monterey / Santa Barbara, CA
1月〜3月が、カリフォルニア沿岸を移動するコククジラを見るのに適したシーズン。2月以降が出産期なので、タイミングが合えば子連れの群れを観察できるかも!?
世界で最も珍しい鳥の一種、California Condor。主に北カリフォルニアのPinnacles National Park やBig Surで見ることができます。北アメリカに生息するアメリカ最大級の鳥でもあり、翼を広げるとなんと約3メートルもの大きさを誇ります。頭はピンクやオレンジがかった色をしていて、黒い翼とのコントラストが特徴的です。California Condorは、腐った肉を主食としていて、生態系の中でとても重要な役割を果たしています。一時期、個体数が30羽以下まで減りましたが、保護活動のおかげで数百羽まで復活。それでも遭遇するのはレアなので、目撃できたらラッキーです!
ベストロケーション:Pinnacles National Park / Big Sur, CA
巣はアクセスしにくい場所に作りますが、エサを求めて広範囲を飛ぶそうなので、目を凝らして空を舞う姿を探してみて!
ロサンゼルスの北のチャネル諸島に生息する小型のキツネ、Island Fox(シマハイイロギツネ)は、世界でも最も小さいキツネの一種です。八つの島からなるチャネル諸島のうち六つの島に生息していて、それぞれの島ごとに独自の亜種が存在します。体重は約1.5〜2.5キログラム、体長は約60センチメートル(尻尾を含む)。生まれたての人間の赤ちゃんよりも小さいサイズです。一時期、ゴールデンイーグルの捕食や島に人間が入ったことで個体数が激減しましたが、保護活動のおかげで現在は個体数が回復傾向にあります。
ベストロケーション:Channel Islands, CA
https://www.nps.gov/chis/learn/nature/island-fox.htm
一時は絶滅危惧種にも指定されるほどで、現在も希少な存在。なお、Santa Rosa Island内の特定のエリアは2024年12月時点は閉鎖中。チャネル諸島に関する最新情報はウェブサイトでご確認を
Point Reyes Blue Butterflyは北カリフォルニアのPoint Reyes National Seashoreだけで見られる、とても珍しい小さな蝶。青い羽を持つ美しい姿です。Point Reyesを含む、サンフランシスコ海沿いのエリアでは、他にも青い蝶を何種類か見ることができます。
ベストロケーション:Point Reyes National Seashore, CA
https://www.nps.gov/pore/index.htm
Devils Postpile National Monumentは、カリフォルニア州東部、Sierra Nevadaに位置する自然保護区です。冬は雪深いため入ることができず、夏は人数制限をされているため、事前に予約が必要です。Devils Postpileは、約10万年前に起きた火山活動によって形成された完璧な六角形の柱状節理で構成された火成岩(玄武岩)の岩壁です。その岩の周りにトレイルがあり、トレイルを歩きながら、さまざまな角度から岩を見ることができます。ちなみに私の子どもたちは、これを見て「巨大フレンチフライだ!」と大喜びしてました。
https://www.nps.gov/depo/index.htm
60 フィート(約18メートル)、ビルなら6〜7階分の高さにもなるDevils Postpile 。こうして見ると確かに巨大なフレンチフライみたい(笑)
Bristlecone Pinesは、地球上で最も長寿命の樹木の一つで、アメリカ西部の高地に自生しています。この木は、過酷な環境に適応して生き延びてきました。寒さにも乾燥にも強風にも強く、一部が枯れても残りの部分が成長を続けていきます。そのため、樹齢4000年を超える木もあります。この木の生息エリアは、冬は雪で入れないことも多いので、夏に行くのがおすすめです。
ベストロケーション:Patriarch Grove, CA
奇妙にねじれた姿が、この木が過ごしてきた途方もない長い年月を感じさせます。道中はオフロードなので走行に注意
Firefallは、Yosemite National ParkにあるHorsetail Fallが、サンセットに照らされて炎のように輝く現象で、さまざまな条件がそろった時だけ観測できるレアな風景です。その条件とは、十分な雪解け水が滝から流れ落ちていること、空が澄んでいること、そして太陽の位置などです。この現象が起きやすい時期には、SNSやニュースで話題になるので、それらをチェックしておくといいでしょう。
ベストロケーション:Yosemite National Park, CA
今年は過ぎてしまいましたが2月中旬〜下旬が観測チャンスの一つ。日没の5〜15分前に輝きやすいとのこと。観測できそうなタイミングは観光客が多く訪れるので、情報をチェックしてプランを練ってお出掛けください!
カリフォルニア州のLassen Volcanic National Park内にあるカラフルな砂漠エリアがPainted Dunesです。鮮やかな赤やオレンジ、黄色の砂丘が広がっています。この色彩の正体は、溶岩が冷える際に火山灰と化学反応を起こしてできたもの。ハイキングをして隣接するCider Coneの頂上まで上がり、そこから見るのがベストです。
ベストロケーション:Lassen Volcanic National Park, CA
https://www.atlasobscura.com/places/painted-dunes
起伏のある黒い大地を赤やオレンジの斑点が覆い、緑の木々が点在する眺めは、まるで絵画のような美しさ
ワシントン州のMt. Rainierで時々観測できるユニークな気象現象が、Mt. Rainier’s Lenticular Cloudsです。山の上空を吹き抜ける湿った風が山の地形によって持ち上げられ、山頂付近にレンズ型やUFOのような雲が発生します。面白いのが、この雲は静止したように見えること。晴れた日や風が適度に吹いている日に見られることが多いです。
Mount Rainier National Park, WA
https://www.nps.gov/mora/index.htm
特定の条件下で発生する円盤状の雲が、Mt. Rainierの頂をすっぽりと覆う様子は、まるで山が雲の帽子をかぶっているみたい
The Issaquah Salmon Hatcheryは、ワシントン州にあるサケやマス類を保護し、育てている教育施設です。春に稚魚を放流し、秋にはするサケを見ることができます。産卵のシーズンを迎える秋には毎年、Issaquah Salmon Daysというフェスティバルが行われます。
The Issaquah Salmon Hatchery, OR
ワシントン州では、天然のサケが産卵のため川をします。Lake Sammamishに生息するヒメマス(Kokanee)も保護管理の対象です
毎年10月にサケが戻ってくることを祝うIssaquah Salmon Days。たくさんの人がサケの姿を見ようと集まります
オレゴン州の沿岸地域で見られる自然の不思議な風景、それがOregon’s Ghost Forest。このエリアには海岸線に立つ古代の木の切り株や根が露出していて、これが「Ghost Forest(幽霊の森)」と呼ばれています。1000年以上前に発生した地震や津波による地形の変化が原因で形成されたと考えられ、オレゴンの霧の中で見るとまるでゴーストのよう。有名なGhost Forestの一つがNeskowin Ghost Forestで、ここには2000年前のSitka Spruceの切り株が点在しています。
ベストロケーション:Neskowin Ghost Forest, OR
https://traveloregon.com/things-to-do/trip-ideas/neskowin-ghost-forest/
雪景色の中に溶け込むようなSnowy Owl。フクロウは夜行性が多い中、明るい日中に活動するので、観察にはぴったり
北極圏を中心に生息する大きなフクロウ、Snowy Owlsは美しい白い羽毛が特徴です。大人のオスは純白に近い体を持ち、メスやヒナは、黒や灰色の斑点模様が見られます。このフクロウは、雪の中で景色に溶け込みカモフラージュをしています。そしてSnowy Owlsは、昼間に行動する珍しいフクロウの一種。冬になると、暖かいカナダやアメリカ北部まで飛来することが多く、ワシントン州やオレゴン州で見ることができます。
ベストロケーション:Damon Point, WA
https://wdfw.wa.gov/places-to-go/shellfish-beaches/990017
砂浜という、ちょっとフクロウとは縁がなさそうなロケーションで遭遇することも