ハワイ現地発!最新生活情報&おすすめ観光情報サイト

第31回【離婚成立前に子供の親権などに関して裁判所に介入を求めることはできますか?】

Q. 結婚10 年のアメリカ人の夫がガールフレンドと住むと言って、私と子ども二人を置いて家を出て行きました。私は専業主婦で、夫からの金銭的サポートなしでは暮らせません。夫は離婚の条件を提示してきましたが、一方的な内容で、離婚解決までだいぶ時間がかかりそうです。離婚成立までの養育費やその他の金銭的サポートを裁判所にリクエストすることはできますか?

A. 離婚が解決するまでの当面の間、子どもの親権「legal custody」、養育権(監護権)「physical custody」、養育費などに関して、裁判所に申し立てをすることは可能です。そのような申し立てはモーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」と呼ばれ、ハワイ州の裁判所のウェブサイト(https://www.courts.state.hi.us/selfhelp/courts/forms/oahu/family_court_forms) でも必要なフォームを入手することができます。
 この申し立ての中で、当面の子どもの親権「legal custody」、養育権(監護権)「physical custody」、養育費、アリモニー(扶養料)、弁護士費用の支払い、その他の支払い(家のローン、医療費、車の保険、健康保険料など)に関する裁判所の決定をリクエストすることができます。金銭的なサポートに関するリクエストをする場合、オアフ島の家庭裁判所では申立人がインカム・アンド・エクスペンス・ステートメント「Income and Expense Statement」という収入と支出の報告書、そしてアセット・アンド・デット・ステートメント「Asset and Debt Statement」という財産と負債の報告書を申し立てと一緒に提出することが義務付けられています。裁判所で争う前にまずメディエーション(調停)の場合も 必要な書類を全て記入して、申し立てを裁判所でファイルをした後、裁判所がヒアリングの日程をスケジュールします。オアフ島の裁判所では、現在モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」のヒアリングは水曜日の午後に開かれることになっています。その時々によりますが、ヒアリングの日程は1カ月半から2カ月後になることが多いです。英語が母国語でない場合、事前に裁判所に無料で通訳の提供をリクエストすることができます。
 ヒアリングの日程がスケジュールされたら、相手方に申し立てとヒアリングのスケジュールの書類を、定められた期限までに送達します。通常ヒアリングの前の週の木曜日までに、相手方と給与明細、W-2 フォーム、もしくはタックスリターン、そしてインカム・アンド・エクスペンス・ステートメント「Income and Expense Statement」とアセット・アンド・デット・ステートメント「Asset and Debt Statement」の書類を交換することが義務付けられています。また、ヒアリングの48 時間前までに、ヒアリングで使う証拠書類を交換することも義務付けられています。
 ヒアリングの当日、それぞれの裁判官は何件ものケースをこなす必要があるので、裁判官は一つ一つのケースに多くの時間を割くことができません。また、多くの裁判官は合意のあるケースのヒアリングを先に行うので、合意がない場合は、長時間待つことになります。
 このような理由から、可能であれば裁判所で争うのではなく、まずは前回ご説明したメディエーション(調停)のプロセスを使って、当面の子どもに関する取り決めや金銭的な取り決めの話し合いをすることが多いです。また、モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」をファイルして裁判所に行った場合も、裁判所が「まずメディエーション(調停)をするべきだ」と判断をして、そのように命じられることも珍しくありません。
 しかし、離婚までの当面の間に子どもと過ごすスケジュールや養育費、その他の金銭面の分担に関して、相手方が全く協力的でない場合や、理不尽な主張を続ける場合は、裁判所の介入が必要になり、モーション・フォー・プリディクリー・リリーフ「Motion for Pre-Decree Relief」の手続きを進めることになります。この手続きを、弁護士に依頼することなしに行うことは可能ですが、簡単なプロセスではないといえます。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2025年1月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

ライトハウス・ハワイのおすすめ記事

~お受験嫌いなママが明かす「ここだけの話」~第252  【1月~5月の過ごし方】

2025.01.01

 クリスマスとお正月が過ぎ、通常モードに戻る1月からの学年後半は、来年度に向けて準備を始める時期でもあります。各種申し込みの締め切りが順番にやってきますので、時系列にまとめてみました。遅れないように必...

~お受験嫌いなママが明かす「ここだけの話」~第251  【よき市民になるために】

2024.12.02

 11月は大統領選挙がありましたが、日本の選挙制度と違い国民が直接投票で大統領を選ぶアメリカでは、選挙に対する個人の意識や盛り上がりが非常に大きいと感じます。それに応じて、学校教育においても、日本より...