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第25回【離婚した後に養育費の金額を変更することは可能ですか?】

Q. アメリカ人の夫と5 年前に離婚をしました。離婚の取り決めで、二人の子どもは私と主に暮らしています。私は最近レイオフされ、新しい仕事を見つけましたが、収入が下がってしまいました。子どもの父親は看護師の資格を取り、高収入になったと聞きました。再度彼と争うことはしたくありませんが、5 年前に決定された養育費の変更を申請することは可能ですか?

養育費の金額を離婚の後に変更することは可能です。前々回にご説明したように、ハワイ州では、養育費の計算のための家庭裁判所が定めたチャイルドサポートガイドライン「Child Support Guidelines」があり、チャイルドサポートガイドラインワークシート「Child Support Guidelines Worksheet」と呼ばれるエクセルの計算用紙を使って、養育費の額を計算します。夫婦それぞれの収入、子どもの数、子どもの健康保険にかかる費用、そしてデイケア(ベビーシッターやアフタースクールケアなど)の費用の項目に数字を入れて、養育費の金額を計算します。双方、もしくは片方の親の収入や子どもの健康保険にかかる費用、もしくはデイケアの費用の金額が変わり、新たな金額で計算した養育費が現在の養育費の金額より10%以上増減する場合は、変更できます。また、そのような理由がなくても、3年ごとに養育費の見直しを申し立てることができます。
 養育費の変更の申し立ては、家庭裁判所、もしくはCSEA「Child Support Enforcement Agency」という養育費を扱う州の機関を通して行います。裁判所で申し立てをする場合は、養育費変更の申し立て「Motion to Modify Child Support」を準備して裁判所でファイルします。養育費変更の申し立て「Motion to Modify Child Support」のフォームは裁判所のウェブサイトで得ることができます。(https://www.courts.state.hi.us/self-help/courts/forms/oahu/family_court_forms)
 給与明細やタックスリターンなどの収入に関する書類、健康保険の費用に関する書類、デイケア費用に関する書類を交換して、当事者間、もしくは弁護士を通して、養育費を計算することは難しいことではないので、合意の下に変更をすることも可能です。その場合、合意内容をStipulation and Order(合意書と裁判所からの命令)という形で書面にして、裁判所に提出して裁判官に受理してもらうことが大切です。また、多くのケースでは養育費を給与からの天引きという形で行っているので、養育費変更の書類を裁判所に提出する際に、養育費の天引きの命令「Order to Withhold Income for Support」を変更したものも作成して、裁判所に提出して、裁判官に受理してもらうことが必要になります。

当事者間で合意できない場合裁判所かCSEAで決定される
 当事者間で合意できない場合、裁判所でヒアリングが行われ、双方の証拠、証言を聞いた上で決定が下されます。
 CSEA を通して変更の申請をする場合、CSEA に養育費変更の申請書を提出します。こちらもCSEA のウェブサイトでフォームを得ることができます。(https://ag.hawaii.gov/csea/application-for-services-pcs001/)。CSEA からリクエストされた書類を双方が提出すると、CSEA は仮決定として新しい養育費の金額を送ります。どちらかがその内容に同意しない場合、ヒアリングをリクエストし、オフィスオブチャイルドサポートヒアリング「Office of Child Support Hearings」という州の機関でヒアリングが行われます。この場合まずCSEA のリーガルアシスタントが双方とヒアリングなしで解決できるか話します。合意がなければヒアリングオフィサーのもと、ヒアリングが行われ、双方の証拠、証言を聞いた上で決定が下されます。
 裁判所もオフィスオブチャイルドサポートヒアリングも、ヒアリングの通訳を無料で提供しているので、必要なら事前に正式にリクエストしましょう。 養育費の変更の大切なポイントの一つは、「養育費は自動的には変更されない」ということです。裁判所も、オフィスオブチャイルドサポートヒアリングも、過去に遡って養育費を変更することはできないので、変更するべき状況にある場合は、できるだけ早く裁判所での申し立て、もしくはCSEA への申請書を提出することが重要です。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年7月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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