老後は、生まれ育った日本で過ごしたい。そのためには、どこを生活拠点にするかを決める必要があります。
今回の特集では、「日本の地方で暮らす」というテーマで、そのメリット・デメリットをはじめ、アクティブシニア
タウンの地方先進事例、移住の準備や心構え、そして、注目の地方自治体や物件・施設リストをご紹介します。
※日本で老後を過ごすための情報は、2019年2月16日号特集「老後は日本で過ごしたい。日本に帰国を考えている人のための住まいガイド」で詳しく紹介しています。
地方で暮らす メリット・デメリット
セカンドライフを日本で過ごしたいと考えている場合、「どこに住むか」「どんなタイプの住まいを選ぶか」が大きな鍵となります。「どこに住むか」は、アメリカに来る前に住んでいた都市や、自宅・実家がある街はもちろんですが、釣りなどの趣味を楽しむことができたり、常々住みたいと思っていた憧れの地だったり、また、将来を見据え介護サービス施設がある場所だったりと、選択肢はさまざまです。
そんな中、「地方に住む」というのも、選択肢の一つ。地方といっても、札幌や福岡など、人口100万人以上の都市もあります。「地方の『都市』なら、例えば北九州市の場合、人口は約96万人。大企業が集まる産業都市で、エンターテインメントやレストランなどの娯楽は充実、空路や公共の交通網も発達しています。また、高知市は人口約70万人ですが、全国で最も病院の数が多いので、高齢者にとっては安心な医療環境といえます(人口10万人あたり。2016年度「都道府県別統計とランキングで見る県民性」調べ第1位)」と話すのは、三菱総合研究所プラチナ社会センターで主席研究員/チーフプロデューサーを務める松田智生さんです。
利便性が高く、大都市とあまり変わることのない生活を送ることができる地方の「都市」は、デメリットがない上に、家賃などの生活コストは、東京に比べて安いのが特長。また、自治体によっては、地方移住支援制度が手厚く、住宅建築補助や、税金控除などを行っているところもあります。
さらに、地方の「田舎」の場合は、場所にもよりますが、比較的不動産の価格が安いため、庭付きの戸建てでも購入しやすいというメリットがあります。また、海や山などの自然が多ければ、空気がおいしい、地産の新鮮な食材が手に入る、温泉を自宅に引き入れることができるなど、都会では味わえない潤いのある日常生活が送れるのも魅力です。「ひどい花粉症から逃れるため、東京から沖縄県の宮古島に移住したシニアカップルもいます。健康面でのメリットも期待できるかもしれませんね」(松田さん)。
一方で「田舎」は、病院の数が少ない、公共の交通機関が少ないなどのデメリットもあります。また町内会の行事に参加する必要があったり、大都市に比べて濃密な人間関係があったりするので、人付き合いが苦手な人には向いていないかもしれません。「意外なところでは、ゴミの分別問題があります。東京から地方に移住した際、『ゴミの分別が10種以上あり細か過ぎて度肝を抜かれた』『町内会の行事が多くて戸惑った』ということもあるそうです。事前のリサーチを行う際に、町内会や自治会についても調べておくと良いでしょう」(松田さん)。
担い手として活躍 日本版CCRC
近年、日本にも、アメリカのCCRC(Continuing Care Retirement Community)のようなアクティブシニアタウンが出てきています。全国で約216の地方自治体が推進意向を、121団体が取り組み意向を示しており、その多くが地方にあるのです(平成30年10月1日時点)。5年ほど前に、地方創生の施策として注目され始めた日本版CCRCは、「生涯活躍のまち」と呼ばれ、地方創生の観点から、中高年齢者が希望に応じて地方や「まちなか」に移り住み、多世代の地域住民と交流しながら、健康でアクティブな生活を送ることができる地域づくりを目指すもの(内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局サイトより)。「さらに、必要に応じて医療・介護が受けることもできるので、老後も安心して住み続けられる場所として注目されているのです」(松田さん)。
日本版CCRCの先進事例の一つに、石川県の「シェア金沢」があります。「シェア金沢」は、金沢の中心街から車で15分ほど離れた郊外にある社会福祉法人運営のコミュニティーです。「キーワードは多世代。約80名の入居者が住む高齢者住宅の他、福祉・児童入所施設、大学生の住宅などが共存しています。さらに温泉やレストラン、カフェ、ドッグランなどは地元の人も利用できるので、子どもからシニアまでが住む“ごちゃまぜ”コミュニティーなのです」(松田さん)。シニアは、共同販売店で仕入れから運営までを行ったり、児童入所施設の見守りを担当したりすることもあり、コミュニティー内で活躍することができます。「コミュニティーの担い手として、シニアにも役割があり、やりがいや生きがいを持てる。約1万坪の広さを誇る多世代共助のコミュニティーを実現できたのは、地方ならでは。今後は、シニアだけが住むコミュニティーではなく、開放性が高く、地域とのつながりが強いCCRCが増えてくると思います」(松田さん)。
セカンドライフのための 準備・行動・心構え
日本でのセカンドライフを実現するためには、綿密な準備と情報収集が欠かせません。まずはインターネットなどで、地方移住情報サイトや各自治体の「移住促進課」のサイトをチェックし、「どこに住むか」「どんなタイプの住まいを選ぶか」を大まかに決めておくと良いでしょう。
また、一時帰国を利用して、住んでみたい街や施設を訪ねてみることも大切です。「セカンドライフに必要なのは、“三つの安心”です。一つ目は“カラダの安心”で、良い病院はあるか、病院の場所や規模はどうか、持病があれば専門の医師がいるか、医療介護サービスはあるかなど。そして二つ目は“オカネの安心”で、生活コストはどうか、地元のスーパーで何を売っているか、価格帯はどの程度かなど、気に入った街を訪れる際は、観光目線ではなく、生活する上で重要なポイントを事前に確認しましょう。
移住は結婚と同じ。良いところも悪いところも受け入れる覚悟を持つつもりで。そして、可能であれば、まずは短期(1日〜2週間程度)、または長期(2週間〜1カ月間)で、地方自治体の体験滞在サービスや『Airbnb』を利用して、実際に生活してみると良いですね。街を訪れた際の印象や直感も大切なのですが、いきなり移住してしまって後悔するケースもあるのです」(松田さん)。ここ数年は、移住支援制度の一環として、ツアーや体験滞在などを積極的に行っている地方自治体も増えており、例えば、無料の移住体験滞在施設「ハウス」(http://bit.ly/2N8qYVT)を提供している大分県臼杵市などがあります。
「三つ目は“ココロの安心”で、セカンドライフを過ごす街で自分の生きがいや役割、そしてどうやって人とつながるかということを、きちんと考えておく必要があります。昨年、ロサンゼルスでセカンドライフについてのセミナーを開催したとき、日本でのんびり老後を過ごしたいというよりも、誰かの役に立ちたいという人が圧倒的に多かったのです。自分がこれから何をしたいのか、何ができるのかを見つめる期間を設けることが必要です」。
充実したセカンドライフを送るには学び続けることも大切だ、と話す松田さん。近年、日本では、シニアを対象にした大学が増えています。奈良シニア大学、長野県シニア大学、神戸シルバーカレッジなど、地方にも数多くあり、学費が安い上、学べる分野も非常に幅広いのが特長です。「アメリカに住んでいた方なら、シニア大学で学びつつ、その語学力を生かして外国人観光客のガイドを務めるという、まさに福沢諭吉の説く『半学半教』を体現することが可能でしょう」。
松田智生さん
株式会社三菱総合研究所 プラチナ社会センター
主席研究員 チーフプロデューサー
Web : platinum.mri.co.jp
セカンドライフ3カ条
◉事前のリサーチ、現地訪問など、入念な準備を行う。
◉カラダ・オカネ・ココロの安心を確保する。
◉移住先での自分の役割を見つけ、やりがいや生きがいを持つ。
地方移住情報サイト
◉自治体クリップ
◉認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター
www.furusatokaiki.net
◉全国移住ナビ
www.iju-navi.soumu.go.jp/ijunavi
(2020年3月末でホームページ閉鎖予定)
◉JOIN 一般社団法人 移住・交流推進機構
www.iju-join.jp
◉生涯活躍のまち推進協議会
https://shougaikatsuyaku.town
どんな住まいのタイプがあるか
1.自宅や実家などの普通の住宅に住む
2.シニア向け住宅・施設に住む
◉サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
バリアフリー構造、安否確認など、一定の基準を満たしている高齢者向けのシニアマンション。
比較的自宅に近い生活を送りながら、必要に応じて訪問介護などの福祉サービスを利用することができます。
◉有料老人ホーム(介護付き/住宅型)
民間が運営。介護保険が利用でき、ホームのケアマネージャーが利用者に合わせて立てた介護計画に沿って介護を受けられます。
介護付きは介護度に応じたパック料金、住宅型は使った分だけ支払う積み上げ式料金です。
◉特別養護老人ホーム(特養)
地方自治体や社会福祉法人が運営する施設。入居対象者は65歳以上で、要介護3以上(例外あり)。費用は6〜20万円/月程度で、所得に応じ食費・居住費の補助があります。
◉介護老人保健施設(老健)
医療法人、社会福祉法人、地方公共団体等が運営する施設。病院等からの退院後、自宅に戻るまでの療養・リハビリを兼ねて一時的に利用します。3カ月程度の利用限定です。
◉介護療養型医療施設
医療法人や地方自治体等が運営する施設。病状は比較的安定しているものの、長期療養が必要な高齢者が利用します。介護保険の改正に伴い、今後は介護医療医院に順次移行されます。
◉軽費老人ホーム
社会福祉法人や地方自治体が運営。介護を必要とせず自立した生活を行うものの、いろいろな事情で家庭生活が困難な人を低料金で受け入れています。
施設には食事を提供する「A型」と提供しない「B型」があります。
◉グループホーム
認知症の人が利用できる施設。認知症の進行を和らげることを目的にしていますが、医療ニーズが高くなると利用できなくなることも。
今、注目の 地方自治体および シニア向け物件・施設リスト
老後を日本の地方で過ごすなら、まずは情報収集が大事。海外からのシニアの受け入れに積極的な地方自治体、シニア向け住宅をご紹介します。
(協力:一般社団法人 地方創生グローバル人材支援協会 )
資料請求、問い合わせはこちらから!
各自治体、物件・施設が用意するシニア向けの詳しい資料をご希望の方は、資料請求フォームにてお申し込みください。※2020年2月28日(金)まで
地方自治体
広島県
移住希望地西日本第1位!
海や山に囲まれながら、人口・経済・産業規模は全国でも上位に入る広島県。都市部では、空路、陸路(新幹線など)ともに交通利便性が高く、グルメやファッション、エンタメも充実。
移住のサポートは、海外に住んでいても、広島県庁が各市役所・町役場などにつないでくれます。
基本情報
都道府県名: 広島県
WEB : www.hiroshima-hirobiro.jp
八幡平市
農と輝の大地
東北有数の観光地であり、もともと移住者や別荘での2地域居住をする人が多い八幡平市。市の中心部から15分程度の範囲には、医療機関、薬局、スーパーなどの生活利便施設が集中しています。
また、日本有数のスキー場や温泉も多く、アクティブライフを楽しめるのが特長。
基本情報
都道府県名:岩手県
WEB : www.city.hachimantai.lg.jp
下関市
歴史と文化が息づく“輝き海峡都市”
効率的で活動しやすい都市機能を備えた下関市。移住希望者に、下関市の雰囲気や生活環境などを体験できる無料の「お試し暮らしプログラム」を提供しており、関門海峡そばの「まちなか暮らし」と農業体験ができる「いなか暮らし」から選べます(1泊2日〜4泊5日)。
※食費などは実費負担
基本情報
都道府県名: 山口県
WEB : www.city.shimonoseki.lg.jp
サービス付きシニア向け住宅
オークフィールド八幡平
シニア向け集合住宅
雄大な自然に囲まれたシニア対象の高齢者向け集合住宅です。やりがい、生きがいを推進する「八幡平型CCRC」として、農業や生涯学習、芸術文化、若者支援など、さまざまな活動を提供。自立と健康をサポートしながら、学ぶ、働く、遊ぶ、をモットーに、楽しく有意義な暮らしを実現します。無料体験宿泊モニター募集中(2泊3日。詳細はhttp://bit.ly/oak2019)。
基本情報
所在地 : 岩手県八幡平市松尾寄木11-20
WEB : https://kotonoha-group.co.jp/oak.html
料金 : 家賃支払い月額モデル
11万円/月(住居費4万5千円、共益費1万5千円、食費/平日3食1万5千円、サポート費3万5千円))
会員制リゾートホテル
草津温泉ホテルヴィレッジ
温泉リゾートを日本の活動拠点に!
「ホテルヴィレッジ」は、日本有数の温泉地、草津温泉のリゾートホテル。会員権システム(クアパーク倶楽部)で、四つのタイプから、一時帰国の頻度や滞在日数に合わせて選べます。
日本に帰国した際は、活動拠点としても利用できるので便利。現在、宿泊体験募集中です(1組2名:1泊夕食付き7150円※送迎バス付きは1万2150円)。
基本情報
所在地:群馬県吾妻郡草津町大字草津618番地
WEB : www.hotelvillage.co.jp/kurpark
料金: ※各タイプ利用日数制限あり
平日15会員:50万円
クア・ハーフ会員:120万円
クア会員:240万円
ホリデー会員:320万円
(税別、有効期限15年間)
滞在型健康増進施設
大自然阿蘇健康の森
ヘルシーライフを学ぶ・知る・実践する!
阿蘇中腹にある滞在型健康増進施設。「病気にならないためのカラダづくり、ココロづくりについて学び、体験すること」を目的とした画期的な施設です。
利用者は、敷地内に滞在(3泊4日以上が基本)しながら、運動、健康知識、心身の癒し、健康食など多方面から学び、実践していきます。
基本情報
所在地:熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽5579-3
WEB : https://kenkonomori.co.jp
料金: <一例>ヘルスケアプラン/2食付き(夕食・朝食)2万8千円〜3万8千円(1泊)※時期・プランにより異なります。
シニアのためのサービスレジデンス
(仮称)パークウェルステイト鴨川計画
2021年秋開業予定の大型シニアレジデンス
千葉県内最大規模※となる総戸数473戸(一般居室409戸/介護居室64戸)のシニアのためのサービスレジデンス。
三井不動産レジデンシャルウェルネス株式会社が、有料老人ホームとして運営し、千葉県南部の基幹病院である亀田総合病院をはじめとする亀田グループとのパートナーシップによる医療介護・介護サービスが提供されます。
※「千葉県内最大規模」とは、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどの高齢者向け施設における住戸数を調査、比較し、表現したものです(2018年11月時点、三井不動産レジデンシャル調べ)
標高約46メートルの高台に建つ22階建ての建物からは、眼下に広がる太平洋を一望することができます。
レジデンス内には、レストランをはじめ、プールや大浴場、露天風呂、多目的ホールなど多彩な共用施設が用意され、さまざまなプログラムやイベントが開催されます。
基本情報
所在地:千葉県鴨川市浜荻字鰐口 944(地番)の一部 他
WEB : www.mfrw.co.jp/bukken/N1702/registration.html
料金: 未定
サービス付きシニア向け住宅
リソル生命の森
健康寿命延伸に欠かせない、疾病・体力低下・認知症の予防を目的としたクラブを運営し、さらに医師や健康運動指導士らが、入居者の心身の健康増進/医療・介護サポートに尽力。
多彩なプログラムやイベントを通じて、趣味、学び、多世代との交流などに積極的に取り組むことができます。
基本情報
所在地: 千葉県長生郡長柄町上野521-4
WEB : www.resol.jp/seimei/index.html or www.seimei-no-mori.com
料金: 未定
(2020年2月16日掲載)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2020年2月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。