X Oレストラン

アメリカの目下の離婚率は約５割と言われているが、実はこれは正しくない。なぜならば、実際は４割に達した1980年頃をピークに、減少の一途を辿っているからだ。しかし、この誤った情報が正当に思えるのはわかる。なぜなら、家族や友だちには悪いが、僕だって妻以外で毎日顔を合わせたいと思う人はほんのひと握りしかいないからだ（知り合いの５割をはるかに下回る）。公平を期して言うならば、彼らも僕に対して同じように感じているに違いない。

通常、レストランは90％から95％が開店後１年以内に閉業すると信じられている。しかしこれも間違った情報で、本当のところは17%くらいとされる。だから、成功率としては、レストラン業の方が結婚よりも高いということだ。

どちらにしてもあまりうれしくない数値ではあるが、僕は、カイムキの『XO レストラン』が、そういう厳しい現実に反して成功してくれるよう願っている。ワイアラエ・アベニューのHung Wonの跡地に生まれたこの店のオーナーシェフは、ケネス・リーさん。先に彼の家族がタイレストランを開業していたが、惜しくも１年以内にクローズ。そこでそのあとに、ローカルフードを融合させた新感覚のアメリカンコンフォートフードがスペシャルティのカジュアルレストランをオープンした。

彼は、JJドーランズ、サム・チョイズ、アロハビア、シェフ・チャイ、トップ・オブ・ワイキキ、さらに直近ではセニアなど、ホノルル指折りの人気レストランで腕を磨いてきたというなかなかの経歴の持ち主。スーシェフのアレイナ・チャンさんとともに（あまりのケミストリーの良さに、僕ははじめ２人のことをご夫婦だと思った）、アジアンテイストのローカルB級グルメにファインダイニングの繊細さを溶け込ませた今風の料理を提供している。

メニューは、ふりかけスパムバターのフォカッチャ、ジンジャーフライドライス 温泉卵添え、カリッと揚げたバターミルクフライドオイスター 滑らかなカレーアイオリ添え、豚バラとほのかに甘い中華ソーセージのクリスピーライス（中華おこげ）、胡椒味のアドボバターグレイビーソースをたっぷりかけたフライドチキン、四川風辣油の効いたヴィーガントマトリゾット、とろりと柔らかな豚バラの生姜ネギとチチャロン、ブラウンバターとオイスターソースと酢を合わせたほんのり酸っぱいソースでいただくニューヨークストリップステーキなどが代表的なところ。

ファミリースタイルのプレゼンテーションなので、みんなでワイワイ取り分けながら楽しめるのもこの店のいいところだ。さまざまなスパイスやエスニック食材を巧みに活かされていて、いまどきの旬なレストランの多くで提供されている新感覚のアメリカンキュイジーヌの流れに沿っている。

難を言えば、店の雰囲気。壁の飾りも赤いビニールレザー張りの椅子もHung Won時代のままで、チャイニーズレストランをビストロに改造した感じが否めない。どうもしっくりこないが、料理がこの認知的不協和を補ってくれるだろう。

最近ホノルルに続々と登場している有名シェフの店の多くでひどい料理に遭遇した体験から判断すると、XO レストランが１年後も健在している可能性は統計的に大いにありだ。商売が繁盛し、そのおかげでインテリアも料理にふさわしいものに変えられるよう願っている。万一スーシェフとの間に愛が芽生えたら、ケビンさんはまたもうひとつ統計値を破らなければならないことになる。

◎XO レストラン/XO Restaurant

3434 Waialae Ave., Honolulu
☎ 808-732-3838
▶ 営業時間：月～土 5:00 – 10:00 pm（日曜定休日）
▶ 取扱クレジットカード：ビザ、マスターカード

(2018年8月16日掲載）

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2018年8月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

この記事をシェアしよう！