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人はミッドライフを何だと考えているのだろう?個人的には、僕がミッドライフクライシスに陥りはじめたのは、今から10年ほど前だったと思う。少し早すぎたが、90歳までは生きないだろうから、というのが僕なりの解釈だった。年をとるのは、本当におもしろくない。このコラムでもしばしばボヤいてきたが、下腹にどーんと居座る贅肉を気にしているだけでなく、体全体の衰えにも憂いを感じる。器械体操や棒高跳び選手、ステージダンサーみたいに信じられない離れ技を擦れ傷ひとつ負わずにやりこなす人たちを見るたびに、ただただ驚嘆するばかりだ。僕なんか、うっかりうたた寝しただけで首の筋肉が張ってしまうのに。かつての若々しい肉体はどこへ行ってしまったのだろう?どうやら、それもみんなミッドライフクライシスモードに突入してしまったようだ。

 

過去を振り返ったときに心に思い浮かぶのは、どういうわけかいつも良かった時代だ。例えば、シャトーブリアン、アワビステーキのバターケッパーソース、ブラッケンドサーモンのブールブランソース、メカジキのロブスターナージュ仕立て、パスタプリマヴェーラ、ベイクドアラスカ、クレープシュゼットとかが主流だった80年代のダイニングシーンをすごく懐かしく思う。そんな思いに耽っていると、エアロビクスタイツとヘッドバンドを引っ張り出して来そうな勢いになる。

 

確かに料理界は、より大胆に、そしてときにはより良い方向へと進化してきた。しかし、ここ何年かの間、80年代リバイバルの兆しがあるのも確かだ(ビッグヘアーや肩パッドだけではない)。それは僕みたいな過去への郷愁の念を抱きつづけるノスタルジックなタイプには、ほっと安心させられるニュースだ。ハワイでは、人気レストランのメニューにさえも、いまだにオイスターロックフェラーやエスカルゴブルギニョン、ブラッケンドアヒなどが、まるで時代の波に乗り遅れたみたいに残っている。

 

リニューアルされたお洒落なダイニングルーム

 

最近、ホームデザインセンター内にあるレストラン『ステージ』がリニューアルオープンしたが、この店はひと昔前のトレンドを今風にリアレンジして蘇らせている。レトロなエレメントを趣味よく折衷したインテリアだけでなく、メニューも刷新された。エグゼクティブシェフのロン・デ・グズマン氏は、そのルーツを80年代に遡るコンフォート系の前菜と主菜の数々をリバイバル。特に20世紀最後の20年間にファインダイニングを体験した僕のような人間には馴染みのあるものばかりだ。

この店が時の流れに取り残されてしまったレストランと違うのは、過去に人気だった料理に斬新なひねりとハワイ独特のエッセンスを加えてモダン化していることだ。変化は必ずしも顕著ではなく、微妙に生まれ変わったものもある。例えば レモンクリームを浮かせた贅沢なコナロブスターのビスクにはハーブパウダーを、カウアイ海老のガーリックスキャンピにはローストレモンとトマトを、そしてビーフウェリントンのマッシュルームデュクセルソースにはトリュフを加えて今らしさをプラスしている。一方、大きく変わったものでは、シーザーサラダのロメインレタスがチコリーとハワイ島産の椰子の新芽に、そしてわさびソースを添えたカラマリフライの衣がグラハムクラッカーに代わったこと。また、葉にんにくバターに浸かったエスカルゴは殻が除かれ、レモン風味のカリフラワーピューレとエリンギが添えられている。カリフラワーピューレの上にのせられたチリアンシーバス(メロ)はモリンガ茶仕立てに、そして柑橘味のダック・ア・ロランジュは、パッションフルーツのリダクションソースと白はちみつのデミグラスソースのダック・アラ・リリコイに変身した。シェフのお薦め料理をセットにした5コースのテイスティングメニュー($80)もあり、これにはシーザーサラダ、トリュフ風味の茶碗蒸し、じっくり煮込んだポークベリー 梅ピューレ添え、ビーフウェリントン 、本日のデザートが含まれる。

80年代を彷彿させるチリアンシーバス モリンガ茶仕立て、
カウアイ海老のガーリックスキャンピ($30)、
ダック・アラ・リリコイ($36)

 

装い新たになった店内は、僕が子供だった頃の高級レストランを感じさせる雰囲気が漂う。昨今は、オープンキッチンとざわざわ賑わうダイニングルームというセッティングが流行っているが、ここではキッチンをガラス張りにして雑音レベルを落とし、照明を抑えた静かな落ち着いた空間をクリエイト。気を散らされることなしに、上質な料理を同席のみんなといっしょに楽しめる上品なスペースになっている。つまり、食事の間もメールやソーシャルメディアに忙しいスマートフォン時代が訪れるずっと前の80年代に当たり前のことだった“会話”が楽しめる。

ステージは、少なくとも今現在の僕自身の存在状態に安心をさせてくれる場所のひとつだ。スナップチャットやらインスタストーリーやら、いまどきの若い人たちの間でトレンド中の技を暗中模索、四苦八苦している時代遅れの僕ではあるのだが、ここなら、今後の料理界の行方を見守りながら過去の料理を振り返り、ちょっぴりヒップな気分に浸れる。

 

◎ステージ/Stage
1250 Ala Moana Blvd., 2F
808-237-5429
▶ 営業時間:火~土 5:00 – 8:30pm(日・月定休日)
▶ 取扱クレジットカード:ビザ、マスターカード、アメリカンエキスプレス、JCB
www.stagerestauranthawaii.com

ショーン・モリス

ショーン・モリス◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。

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Twitter: @incurablepicure
Instagram: @incurablepicure

 

(2018年7月16日掲載)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2018年7月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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