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年をとるということは、大変なことだ。近視なので遠くが見えるコンタクトレンズをずっと使用してきたのだが、年とともに近くのものがぼやけて見えるようになり、老眼用レンズもはめることにした。それはよかったのだが、いちいち片目を閉じて使い分けなければならないのが厄介だ。(ちなみに、どうして目を細めるとき、背中を丸くしてしまうのだろう?)この調子で行くと、10年後、僕の体はどれほど働きが鈍ってしまっているのだろうかと想像すると無性に心配になってくる。僕のPR会社のクライアントであるレストラン「TBD…」で最近何度か食事をしたのだが、こういう五感に訴えるマルチセンサリーダイニング体験も、徐々にその意図が掴めなくなっていくのではないかと恐れる。

 

 

「TBD…」は、ハレクラニの元総料理長のヴィクラム・ガーク氏が、ロータス・ホノルル・アット・ダイヤモンドヘッドの2階にオープンしたレストランだ。18~24ヶ月の期間限定のポップアップであるにもかかわらず、彼はそのスペースをエレガントでしかも気取らない素敵な空間に作り変えた。そしてそこで、彼のトレードマークであるハイレベルかつ親しみやすいグローバルな料理を提供している。“未定”という意味の店名に反映されているように、遊び心溢れ、しかもスポンテニアスな彼の料理人としての方向性は、その場の思い付きでメニューを変える自由を許している。

ヨーロッパ、中東、ハワイで学び、修行し、研鑽を積み、そして東南アジア各地を旅したインド人シェフである彼は、これまでの人生航路のあちこちで学んだ知識と経験をもとに、エキゾチックとファミリアリティをシームレスに融合させた独特のスタイルのコンフォートフードを編み出した。おまけに、今どきの客たちがモバイル機器に気を取られ注意散漫にならないよう、両手や何らかのアクションを必要とする料理も創作した。ここでの食事は、いろんな感覚を動員しなければならないのだ。

スタートのパリパリ超薄パパダム(レンズ豆のチップス)は、歯に触れた途端にサクッと割れる。クリーミーな自家製ブッラータチーズは、ポロポロにして甘いダイストマトのタルタルに混ぜてから、クリスピーなニゲラシード(ブラックシード)クラッカーにのせていただく。続くハモン・イベリコは、削ったパルメザンチーズとともにトマトレーズンジャムを塗ったカリカリトーストにのせられているので、当然手づかみ。滑らかなコーンスープにポップコーンを浮かせ、焦がしバターをたっぷり落としたポップコーンスープは、甘くてスパイシーな味わいだ。そして、キョフテ(トルコのミートボール)のトマト煮は、シナモンとスマックのスパイスが、散りばめた自家製フェタチーズの刺激をほどよく抑えていた。

 

 

 

メインも彩り鮮やかだ。最初に出てきたTBD….ベントウは、スモーキーなババガヌーシュとベルベットのような舌触りのフムス、からりと揚げたファラフェル、バターレタスとラディッシュとスイカラディッシュのスライスが、4つ仕切りの弁当箱に詰められている。レタスで包んで地中海風ラップにしていただく。

タンドール釜で焼いたしっとり柔らかな鶏肉に、大胆な味わいのグリーンマンゴーチャツネ、自家製ギリシャヨーグルト、ミントをのせたTFC(タンドリーフライドチキン)は、香ばしさ、なめらかさ、甘さ、スパイス、ハーブの異なった風味と食感のコンビネーションが楽しめる。

同じくタンドール釜で焼かれたプライムリブアイまたはテンダーロインステーキ カフェ・ド・パリ・ソース添えは、ガーリックとカレーの風味が絶妙。付け合わせのウルフライは、甘みをマイナスした焼き芋のような味と食感だ。ほんのり甘い自家製タマリンドケチャップが添えられていて、ポテトフライの代わりとしてパーフェクトだった。

デザートもぜひトライの価値あり。特に、柔らかなバナナ風味のクロカンブッシュとマンゴークルフィ(インドのアイス)がオススメだ。後者は、マンゴーラッシーアイスに似ている。

ここでの食事は、目にも美しいプレゼンテーションであったこと、またすべての料理がバランスのとれた味わいであったことだけでなく、五感に響き渡る素晴らしい体験だった。スパイスマーケットの香辛料やエキゾチックな材料を取り入れた親しみのある料理を、エレガントな空間で手づかみで食べるというのも妙に楽しかった。

耳の中から変な毛が生え出し、黄色く弱った歯で固いものが食べられなくなる日がやがて来るのを恐れながらも、僕はこんな美食が楽しめる今を大切にしようと思っている。ただTBD…に関しては、もしかしたら18ヶ月限りになるかもしれない。

 

ティービーディー… /TBD…
ロータス・ホノルル・アット・ダイヤモンドヘッド 2885 Kalakaua Ave., 2F
☎808-791-5164
▶営業時間:日〜木 5:00pm〜10:00pm、金・土 5:00pm〜12:00am
▶ 取扱クレジットカード:ビザ、マスターカード、JCB、アメリカンエキスプレス、ダイナースクラブ

 

ショーン・モリス

ショーン・モリス◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。
ソーシャルメディアも発信中
Twitter: @incurablepicure
Instagram: @incurablepicure

(2019年7月16日掲載)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2019年7月16日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

 

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