ワイキキの雑踏を離れて、ダイアモンドヘッドの東側へ。静かな佇まいの住宅が並ぶカハラへ行くと、ハワイ語の鳥の名を付けた通りに出会います。
その1つがエレパイオ通り。エレパイオは体長15センチにも満たない虫を食べる小さな鳥で、オアフの他、カウアイとハワイ島にも生息していると聞いています。この他にも、プエオ(梟)や、ノイオ(アジサシの一種)、コロア(ハワイ マガモ)、イイヴィ(ミツスイの一種)の通りの名も。どれもハワイに棲む固有種の鳥です。
昔、ハワイの島々には花の蜜を吸う固有種の鳥が多く生息していました。蜜を吸うのに適した、湾曲した長めの嘴を持ち、鮮やかな赤や黄色、艶のある黒の羽を持つ小鳥です。この羽毛で作られていたのが、アリイ(首長)がその権力を象徴するかのごとく羽織っていたアフウラ(ケープ)やマヒオレ(帽子)。代々捕獲を専業にしていた人が森に入り、鳴き声を聞き分け、植物の樹脂から得た粘着力の強い鳥もちや網を使って小鳥を採っていましたが、1羽の鳥から数枚の羽を取ると、放してあげていたとか。ネイティヴハワイアンにとって、神の住む領域は山の高みや空、自分達の住む所より高いところですが、これは古今東西同じ発想なのかもしれません。その高みから飛んでくる鳥は、神の使いとも信じられていたので、殺すことはしなかったのかもしれません。
それでは何故、ハワイミツスイの大半が居なくなってしまったのか?
捕鯨船や多くの帆船がハワイに寄港するようになり、その船の水槽に居た蚊がハワイに蔓延し、小鳥にマラリアを移してしまい絶滅に追い込んだ、と云うのが大きな原因と考えられていますが、広大な牧場や砂糖農園を作るために生じた森林の減少や外来種の動物の導入なども、その要因でした。
最近は地球温暖化の影響も懸念されています。ハワイの平均気温が上がると、蚊の生息する地域が標高の高いところにまで達し、今も高地に生息している鳥に影響が及ぶと考えられているのです。因みに、エレパイオもイイヴィも2050年頃には、その鳴き声を聞けなくなるだろう、との推測もなされています。道の名だけでなく、ハワイ固有種の鳥そのものが生き延びることが出来る環境にしなくては!
(2018年1月1日掲載)
◎ ビショップ博物館ドーセント
旅行会社勤務時代よりビショップ博物館でドーセントのボランティアを開始。2003年より同博物館の会員代表機関 Bishop Museum Association Council の唯一にして初の日本人メンバーに。ハワイの歴史、文化の研究に取り組む