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第7回【離婚の財産分与で、専業主婦であっても 財産の半分をもらえるのは本当ですか?】

Q. 結婚後15 年間ずっと専業主婦で、お金はアメリカ人の夫が管理しており、私の名義の財産はありません。結婚後に買った夫名義の不動産、共同名義の銀行口座と車、夫が軍からの収入を通して積み立てているリタイアメントの口座、リタイヤ後にもらう軍の年金が主な財産です。夫は私は何ももらえないと言いますが、ハワイでは財産は半々で分けると聞きました。

A. ハワイ州での離婚による財産分与は、基本的にきっちりとしたルールにのっとって行われます。まずは共同名義と、それぞれが所有する財産(預金、年金積立金、生命保険、株、証券、自動車、住宅など全て)を5 つのカテゴリーに分けます。しかし、婚前契約や結婚後の契約で離婚の財産分与では分けないそれぞれの財産と定められているもの「Marital Separate Property」、婚姻中に贈与や相続されたものでその保持にMarital Separate Property が使われた財産は持ち主のものになり、この5 つのカテゴリーには分類されません。 5 つのカテゴリーは次の通りです。

1:婚前から所有していたものの結婚時点での価値
2:カテゴリー1 の結婚の間に値上がりした分
3:婚姻中に贈与・相続したものの贈与・相続時点での価値
4:カテゴリー3 の贈与・相続後に値上がりした分
5:それ以外の財産

 基本的に、裁判所は「カテゴリー2、4、5 に当てはまる財産は名義に関わらず夫婦二人で半々に分ける」とし、「カテゴリー1 と3に当てはまる財産は本人のもの」とします(カテゴリー3 に関しては、贈与された財産や相続した財産を結婚の間に生活費や学費などに使った場合、使ったお金は戻ってこないという判例があります)。負債に関しても同じルールが適用されます。

結婚後に築いた財産は、ルールにのっとり半々に分ける
ご相談者は、専業主婦で財産は全て夫の収入から築き上げられたものとのことですが、裁判所はそのような場合も、結婚の間に築き上げられた財産を半々で分配します。裁判所で争えばそうした結果になることがわかっているので、引き下がるべきではありません。

 家に関しては、どちらかが家をもらうことになる場合は、その人が不動産の価値(現在の価値から住宅ローンの残高を差し引いたもの)の半分を相手に支払い、現在の住宅ローンを引き継ぐ必要があります。どちらも家を欲しいと思っていない、もしくは相手の持分を買い取ったり、住宅ローンを引き継いだりすることが不可能であれば、家は売却し、売却金を半々で分けることになります。ご相談者の場合、今まで専業主婦だったということで、住宅ローンを引き継ぐというのは現実的なことではないかもしれません。
 
 また、ご相談者のご主人は軍に勤めているとのことで、軍の年金、そしてリタイアメントのアカウント(Thrift Savings Plan と呼ばれるプラン)の結婚の間に築き上げられた部分の半分をもらうことができます。リタイアメントの分配方法に関しては、来月号で詳しくお話しますが、ハワイでの離婚の場合、不動産と共にリタイアメントプラン、年金積立金が財産分与対象の大きな存在になることが多いです。特に配偶者が、軍や連邦政府、州政府、ユニオンに所属する仕事をしている場合は、年金「pension」があることが多いので、弁護士を雇ってきちんとどのようなリタイアメントプランがあるのか調べて、正しく分割することが大事です。
 
 財産分与に関しては、複雑な事実関係や財産がないのであれば、裁判所で争った場合の結果を予測することは難しくありません。それは弁護士もわかっていることなので、ご相談者は「法律にのっとって財産分与をしたい」ということを主張するべきです。気を付けたいのは、裁判所は両者が合意しているのであれば、この基本的なルールにのっとっていない財産の分配方法でも承認します。ですから、相手方から提示された財産分与の内容に納得できない場合は、法の下では何をどれくらいもらう権利があるのかを、弁護士に相
談するとよいでしょう。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年1月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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