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第4回【離婚後子どもと本帰国する際、ハーグ条約でどんなことに気を付ければよいですか?】

Q. アメリカ人の夫との間に12 歳と17 歳の子どもがいます。ここ数年夫との関係がうまくいっていません。子どもたちは日本が大好きで、私も離婚した場合ハワイで生活していくのは難しいので、離婚後は子どもを連れて日本に帰りたいと考えています。しかしハーグ条約に引っかかり誘拐罪に問われてしまう可能性もあると聞きました。どのように行動するべきか教えてください。

A. 日本ではハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)が2014 年4 月1 日に発効、施行されました。ハーグ条約に基づき、日本の裁判所は子どもの返還の申し立てが次の4つに当て
はまる場合、子どもの返還を命じなければいけないことになっています。

1)子どもが16 歳に達していないこと
2)子どもが日本国内に所在していること
3)子どもがもともと住んでいた国(常居所地国)の法律によれば、子どもの連れ去りや、留置(約束した期限を過ぎても子どもを返さないこと)が申立人の監護権を侵害するものであること
4)子どもの連れ去りのとき、もしくは留置の開始時に、常居所地国がハーグ条約締約国であったこと

 最初の条件に基づいて、ご相談者の上のお子さんは16 歳以上ですので、ハーグ条約が当てはまらないということになります。しかし16 歳以上だとしても、相手方の同意、もしくは裁判所の許可なしで子どもを連れ去ることはするべきではありません。ハーグ条約が当てはまらなくても、ハワイの家庭裁判所は連れ去りに関してさまざまな命令を出すことができるからです。

 ハワイの裁判所は日本がハーグ条約に加盟する前に、日本人の母親が子どもを連れて日本に帰り、ハワイに住むアメリカ人の父親が子どもとの関係を完全に断たれてしまったケースを多く見ており、ハーグ条約加盟以降もこの件に関してとてもセンシティブである
と言えます。

相手の同意か裁判所の許可なしで現状を変えるべきでない 
 国際結婚のケースに限らず、「離婚を考えている状況や離婚のプロセスを始めた状況で、相手方の同意、もしくは裁判所の許可なしで現状を変えるべきではない」というのがハワイの裁判所の基本的な考え方です。お子さんたちが今までずっとハワイに住んでいたのであれば、相手方の同意なしでは日本に引っ越すべきではありませんし、相手方の同意がある場合も、弁護士に相談してその同意を裁判所でファイルする合意書の形にして、双方でサインをし、裁判所に提出するべきです。

 先程述べた「現状を変えるべきでない」という考えに基づいて、「18 歳未満の子どもを現在住んでいる島から出したり、現在通っている学校から転校させたりしてはいけない」という裁判所の命令がオアフ島の家庭裁判所の離婚の訴状に付随しています。離婚訴訟の原告は訴状をファイルした時点、そして被告は訴状が送達された時点からこの命令に従う必要があります。ですから離婚の訴状がファイルされたら、それ以降は「相手方の同意、もしくは裁判所の許可なしで、子どもを島の外に出してはいけない」ことになっています。しかし離婚の訴状がファイルされる前に子どもを連れ去った場合でも、配偶者の同意なく帰国した場合は、ハワイの裁判所は子どもの返還を命じるでしょう。

子どもの引っ越しを争う裁判は多額な費用がかかることも
 お子さんと日本に帰国したいと考えている場合は、相手方と交渉して同意を得るか、裁判所で日本に引っ越すのが子どもにとって最善であるということを立証し、その許可を得る必要があります。子どもの引っ越し「relocation」を争う裁判には多額の弁護士費用がかかることが多いです。ご相談者が子どもの引っ越しに関して相手の同意を得られない場合は、現在のお子さんたちの状況と双方の当事者の状況などに基づき、裁判所で争った際に、子どもの引っ越し「relocation」の許可が出る可能性はどれくらいあるのか、そのプロセスにかかる費用も踏まえて考えていく必要があります。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2022年10月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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