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第3回【ハワイの離婚で子どもの親権はどのように決められるのですか?】

Q. アメリカ人の夫との間に10 歳の子どもがいます。私は専業主婦で育児をしてきました。先日離婚を考えていること、子どもを連れて出ていきたいことを夫に伝えました。しかし、夫は私が英語をあまり話せず、専業主婦なので裁判所は私に親権を渡すことはない、子どものことは諦めて一人で日本に帰国するべきだと言います。この状況で私ができることはありますか?

A. お子さんのいる夫婦がハワイで離婚する場合、子どもの親権「legal custody」、養育権(監護権とも呼ばれる)「physicalcustody」が争点になります。親権「legal custody」は、お子さんに関する決定をする権利、そして養育権「physical custody」はお子さんと主に一緒に住む権利です。どちらも共同、もしくは単独という形を取ることができます。
 
 親権「legal custody」は、多くのケースで共同という形を取ります。その場合、子どもに関する決定は両親の合意のもとで行わなければなりません。島の外への引っ越し、どの学校に行かせるか、どの病院に行かせるか、パスポートの更新、運転免許の申請などが子どもに関する決定の例になります。

 養育権「 physical custody」は、双方の親が子どもと過ごすスケジュールが50/50、もしくは50/50 に極めて近い場合、共同となります。片方の親が単独で養育権「 physical custody」を持つ場合は、もう片方の親が訪問権「visitation」を与えられることになります。後々トラブルにならないよう、細かいスケジュールを立てることが多いです。

 裁判所は、子どもの親権「legal custody」、養 育 権「 physical custody」、訪問権「visitation」を子どもにとって何が最善かということを基に決定します。その際、相談者の方のように英語があまり話せないことや、収入がないことは通常問題になりません。今まで主にお子さんの面倒を見てきたとのことですので、相手方が単独の親権「legal custody」、養育権「physical custody」を持つことにはならないでしょう。相手方によほどひどい問題がないのであれば、親権「legal custody」は共同、養育権「 physical custody」は最低でも共同、もしくは相談者が単独で養育権「 physical custody」を持つというケースになると思われます。

 離婚をする夫婦が子どもの親権「legal custody」、養育権「physical custody」、訪問権「visitation」に関して合意できない場合、多くのケースで裁判所はまずカスタディエバリュエーター「Custody Evaluator」、もしくはファクトファインダー「Fact Finder」と呼ばれる調査官を任命します。調査官は、両親、子ども、その他の両親や子どもの関係者(学校、主治医、同居する家族など)と面接し、必要な書類に目を通し、それぞれの家を子どもがいるときに訪問します。その上で裁判所に提出するリポートを作成します。通常裁判所、そして双方の弁護士が信頼する調査官を選ぶので、リポートの内容を見て、裁判ではこうなるであろうと予測を立てることができ、リポートの内容を使って合意に至ることができる場合が多いです。しかし、合意に至らない場合は裁判になり、裁判所が決定を下すことになります。子どもの親権「legal custody」、養育権「physical custody」を争う裁判には多額の弁護士費用がかかり、カスタディエバリュエーター「Custody Evaluator」、もしくはファクトファインダー「Fact Finder」にも支払いをすることになります。しかし、収入制限を満たす場合、裁判所が無料の調査官を提供する場合もあります。

 さまざまなお話をしましたが、実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。次回はハーグ条約や日本への帰国についてのご相談にお答えする予定です。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310 Honolulu(Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2022年9月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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