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~お受験嫌いなママが明かす「ここだけの話」~第248  【2言語教育への取り組み】

 デュアル・ランゲージ・プログラム(2言語教育)をご存じでしょうか。イマージョン教育と呼ばれることもありますが、その内容は、英語のネイティブスピーカーと他言語を話す児童が2言語で一緒に授業を受け、各教科の内容を習得する教育方法です。デュアル・ランゲージ・プログラムで学習すると、各教科の授業内容を両言語で理解して習得できることに加え、多文化を理解し尊重することも同時に学ぶことができます。そんな画期的なプログラムが、ハワイの公立校であるハハイオネ小学校のキンダーガーテンと1年生で導入されています。しかも日本語と英語の2言語で行われているのです。
 イマージョン教育には一方向性イマージョン(児童全員が初めて触れる外国語で学ぶ)と双方型イマージョン(英語を母語とする児童と目標言語を母語とする子どもが50%ずつ参加し、学び合う)があり、導入時期や目標言語への接触時間のアプローチも複数あるようです。導入時期にはアーリー・イマージョン(キンダー〜1年)ミッド・イマージョン(2~3年生)、レイト・イマージョン(4~5年生)の3パターンがあり、目標言語への接触時間も50%~100%と異なります。
 移民が多いアメリカで70年代に導入され、社会のニーズに合わせて独自の発展を遂げているイマージョン教育ですが、地域の事情に合わせて①学校の人種比率を保つため②少数派言語母語を話す子どもの教育平等のため③より豊かなグローバル教育のため。という三つの目的のもと、今後もさらに増えていく見通しです。
 国際バカロレア認定校であるハハイオネ小学校では、現在はアーリー・イマージョンが導入された段階です。バイリンガルの教員が担当し、8〜11時は英語でランゲージアート(英語)を学び、
11〜2時(終業時間)までは日本語でマスとサイエンス(算数と理科)を学ぶスタイルで、2言語を半分ずつ使用します。日本語を母語とする児童とそうでない児童の割合は約1対6に保たれているそうです。
 授業だけでなく、日本式の運動会、スピーチコンテスト、演劇(日本語)なども行事として盛り込まれているので、子どもたちが楽しみながら日本文化を学ぶことができます。驚くことに、日本語を母語としない児童が1年後にはナチュラルに日本語を話すようになると聞きます。
 ハワイでは、州教育局がハワイ語との2言語教育のパイロット・プログラムを1987年に二つの公立校で導入した歴史があります。このプログラムは、現在K〜12年生を対象にハワイ諸島5島で合計1800人が学ぶスケールに発展。携わる教員は100人を超えているそうです。ハワイにとってハワイ語とその文化を次世代に継承していく意義は大変重要なので、2言語教育の導入が果たした役割は非常に大きかったといえるでしょう。
 K〜1年生という早い時期に、他言語を学習できる機会が公立校でも与えられるということ、そしてそれが子どもたちの将来にもたらすインパクトは非常に大きいと考えます。ハハイオネ小学校でスタートした日本語での2言語プログラムが、今後ハワイ語のプログラムと同様に独自の進化を遂げ、ハワイからグローバルな人材が続々と世界に羽ばたく日が来ることに期待したいと思います。
 以前ワイパフ高校の多彩なカリキュラムについてもご紹介しましたが、ハワイの公立校では、州教育局のリードのもと、各校がイノベーティブなプログラムを導入し教育改革を進めています。私高公低で知られるハワイにおいても、現場は着々と進化していることを知っていただけたらと思います。

スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オレゴンで学生時代を過ごす。京都女子大学短期大学部卒業。88年ハワイに移住し結婚。ハワイの公立校で教育を受けた長女は現在アメリカ本土で大学院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌やウェブでの執筆活動を精力的に行っている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワイ』(双葉社刊)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年9月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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