年に一度、4年生と8年生を対象に全米で行われるNAEPという統一学力テストは「全国レベルの成績表」と呼ばれ、各州の小学生の学力を比較評価する基準となっています。10月末にその結果が出ましたが、2022年度のハワイの小学4年生は、算数と英語の両学科で全国平均を上回る好成績を収めました。
■長く低迷した公立校の順位
ハワイの公立校の全米ランキングは、長い間、全米最下位ではないけれども、かなり下の方で低迷していました。このコラムの第一回目でも引用しましたが、2003年度の小学校の部では、全米第44位(psk12.com)という結果でした。過去20年間でランキングは年々上昇してきましたが、学校設備、教育内容、教員の資質など、公立校が取り組むべき問題は多く、教育改革が叫ばれてきました。2009年にはfurloughFriday(州政府の財政困難にともない公立校が17日間の授業短縮を余儀なくされた。後に緊急予算を振り当てることで解決に至る)という大問題が起こったのを覚えている人も多いかと思います。
■パンデミックで学力低下?
NAEPが最後に実施されたのはパンデミック前の19年。パンデミック後初となる今年のテストでは、長期間のオンライン授業による学力低下が懸念されていましたが、4年生のテスト結果は、英語と算数の両方で全国平均を上回り、8年生は英語が平均以上、数学が平均的を少し下回る結果となりました。この数値を見る限り、パンデミックのダメージは最小限で抑えられていると言えます。8年生のスコアは4年生より低くなっているので、中学以降の学力向上(特に数学)には今後とも注力しなくてはならないでしょう。小学生のときに良い学習習慣を身に付けること、ミドルスクールでは教科ごとに教員が異なる学習スタイルに慣れ、宿題や課題をきちんとこなすこと、そして高校ではAPクラスなど難易度の高い授業を積極的に取ることが重要だと思います。
またNAEPでは、05年~15年の過去10年に学力が上昇した全米トップ10の州を発表していますが、ハワイは第2位になっています。ハワイの教育改革が進んできた成果が、テストスコアに反映されていて、実に喜ばしいことだと思います。22年のテストスコアも、この上昇気流に乗っていますので、このままハワイのレベルが底上げされることに期待したいですね。ハワイの公立校でも良質な教育が受けられる時代が、もうすぐそこまで来ているような気がします。
スピアかずこ
1964年愛媛県生まれ。大阪•京都•オ
レゴンで学生時代を過ごす。京都女子
大学短期大学部卒業。88年ハワイに
移住し結婚。ハワイの公立校で教育を
受けた長女は現在アメリカ本土で大学
院生、次女はハワイ大学へ通う。雑誌
やウェブでの執筆活動を精力的に行っ
ている。共著に『ハッピー•グルメ• ハワ
イ』(双葉社刊)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年1月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。