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第21回【アメリカでは共同親権がおおいのですか?英語が苦手・低収入は親権争いに不利?】

Q. アメリカ人の夫との間に9歳の子どもがいます。子供の世話は私が主にしてきましたが、夫は基本的には良い父親です。夫は同僚と不倫をして、離婚をしたいと言われました。夫は「共同親権が欲しい。英語をあまり話せず、収入も少ない私は裁判所で争ったら親権をもらえないだろう」と言います。私のような状況でハワイの裁判所ではどのような判断が下されますか?

A. お子さんのいる夫婦がハワイで離婚する場合、子どもの親権「legal custody」、養育権(監護権とも呼ばれる)「physical custody」が争点になります。親権「legal custody」は、お子さんに関する決定をする権利、そして養育権「physical custody」はお子さんと主に一緒に住む権利です。どちらも共同、もしくは単独という形を取ることができます。
 裁判所は子どもにとって何が最善かを基準に、これらの条件を決めていきます。また、片方の親によっぽどの問題がない限り、両親ともが子どもに関わっていくことが子どもにとって良いことだという見方をします。
 ですから、どちらの親も親権「legal custody」を持つことを望む場合、親権「legal custody」は多くのケースで共同という形になります。その場合、子どもに関する決定は両親の合意のもとで行わなければなりません。島の外への引っ越し、学校や病院の選択、パスポートの更新、子どもの運転免許の申請などが、その例になります。
 養育権「physical custody」は双方の親が子どもと過ごすスケジュールが50/50、もしくは50/50 に極めて近い場合、共同となります。片方の親が単独で養育権「 physical custody」を持つ場合は、もう片方の親が訪問権「visitation」を与えられます。
 先程も述べたように、裁判所は、子どもの親権「legal custody」、養育権「physical custody」、訪問権「visitation」を子どもにとって何が最善かを基に決定します。その際、英語があまり話せないことや、収入が少ないことは通常問題になりません。英語が一言も喋れなかったり、まったく収入がなかったりしても、子どもにとって良い親であることは可能だからです。同じように、夫が不倫をしていることやそれが原因で離婚に至ったことも、その不倫相手が危険人物などでない限り、子どもの親権「legal custody」、養育権「 physicalcustody」、訪問権「visitation」にほぼ直接影響はないといえます。
 ご相談者の夫は基本的に良い父親だということなので、親権「legal custody」は共同になります。夫が半々のスケジュールやそれに近いスケジュールで問題なく子どもの世話をすることが可能なのであれば、養育権「physical custody」も共同になります。それが難しい場合は、ご相談者が単独で養育権「physical custody」を持ち、子どもの年齢や状況、それぞれの親の状況を踏まえて、子どもにとって良いスケジュールは何かを考えることになります。

裁判になる前に調査官によって合意に至るケースも多々 
 離婚をする夫婦が子どもの親権「legal custody」、 養 育 権「physical custody」、訪問権「visitation」に関して合意できない場合、多くのケースで裁判所は、まずカスタディエバリュエーター「Custody Evaluator」、もしくはファクトファインダー「Fact Finder」と呼ばれる調査官を任命します。ここで調査官への支払いが発生することになりますが、収入制限を満たす場合、裁判所が無料の調査官を提供するケースもあります。
 調査官は、両親、子ども、両親や子どもの関係者(学校、主治医、同居する家族など)と面接をして、必要な書類に目を通し、それぞれの家を子どもがいるときに訪問します。その上で裁判所に提出するリポートを作成します。通常は裁判所、そして双方の弁護士が信頼する調査官を選ぶので、リポートの内容を見て、裁判ではこうなるであろうと予測を立てることができ、リポートの内容を使って合意に至ることができる場合が多いです。
 しかし、合意に至らない場合は裁判になり、裁判所が決定を下すことになります。子どもの親権「legal custody」、養育権「physical custody」を争う裁判には多額の弁護士費用がかかります。

宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law

父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。

宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2024年3月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。

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