Q. 結婚10 年になるアメカ人の夫と離婚することになりました。夫は離婚経験があり、裁判所で争って多額の弁護士費用を払うことになったそうです。私たちには不動産などのある程度の財産はありますが、子どももいないので、夫は弁護士を入れずにメディエーターを雇って離婚の条件を話し合って解決しようと言います。夫の言う通りにして良いのでしょうか?
A. メディエーション(調停)とは、争いごとをインフォーマル、そしてプライベートな形で中立な立場を取るメディエーターを入れて話し合って解決するプロセスです。裁判官とは異なり、メディエーターは決定権を持たず、双方の話を聞くことによって解決の手助けをします。裁判と比較すると次のような利点があります。
①裁判では最終的に裁判官が判断をし、決定を下すことになりますが、メディエーションで離婚の条件を解決する場合は、双方が納得して合意した内容で解決をすることになります。ですから、裁判官の決定には通常入らないような細々とした取り決めを入れたり、クリエイティブな解決の仕方をしたりすることができます。
②裁判の記録は基本的に公な記録となり、他人が手に入れることができますが、メディエーションのプロセスはプライベートなもので、話した内容は公開してはいけないという決まりがあります。
③裁判で証言をしたり、証拠を使ったりする場合は、たくさんの法的なルールに従う必要がありますが、メディエーションではそのような制約はまったくありません。そのため、話を効率的に進めることができます。
④裁判所で争う場合、いくつかの例外を除いて、すぐに裁判所で裁判をすることは不可能で、裁判は何カ月も先になりますが、メディエーションはメディエーターを含む皆の都合が合えば、その時点で開始することができます。
⑤裁判所で争う場合、多額の弁護士費用がかかることになります。メディエーションを通して解決する方が、弁護士費用が少なくて済みます。
⑥裁判所で争う場合と異なり、多くのメディエーターは双方の当事者が同席する形でのミーティングはせず、それぞれの当事者と話をしながら解決を図ります。このため、相手と直接対峙しないで、自分の主張をメディエーターを通す形で伝えることができます。
ハワイの家庭裁判所はメディエーションを奨励しています。当事者間で離婚の条件に合意できない場合、最終的に裁判所の介入を求めることになりますが、その前にメディエーションを行うことが義務付けられています。
メディエーションは弁護士を入れても費用は抑えられる
メディエーションをするからといって、弁護士が必要ないというわけではありません。双方に弁護士がいるケースでもメディエーションを行いますし、メディエーターは中立的立場に立っているため、アドバイスをしないので、不利な条件にならないためにも弁護士が必要になります。
また、合意内容をまとめた書類にサインをする前に必ず弁護士にチェックしてもらうべきです。それに加えて、通常メディエーターは合意内容に基づいて、裁判所に提出する離婚の書類を作成しないので、当事者自身で作成しない場合は、弁護士が必要になります。
メディエーションにかかる費用は、どのようなメディエーターを使うかによって異なります。ハワイの家庭裁判所は、弁護士がついていない多くのケースで、調停のサービスを低コストで提供する非営利団体メディエーションセンター・オブ・ザ・パシフィック(Mediation Center of the Pacific) を使ってメディエーションすることを義務付けます。費用は少なくすみますが、必ずしも家族法や法律に精通しているわけではないので、大きな財産や複雑な事情がない場合に向いています。双方に弁護士がついている場合は、家族法に精通しているメディエーターを使うことが多いです。その際、数千ドルのデポジットが必要になり、彼らは弁護士のように時間でチャージをします。しかし、意義のある話し合いができ、裁判で争うより、弁護士費用は格段に少なくて済む場合がほとんどです。
宮本直子
Naoko Miyamoto Attorney at Law
父親の転勤で高校3 年生よりアメリカ在住。1997年カリフォルニア大学バークレー校政治学部卒業。2000年ハワイ大学マノア校法科大学院(ロースクール)修了。2001年ハワイ州裁判所・ハワイ地区米国連邦裁判所弁護士登録。ハワイ州最高裁判所を経て2001年より離婚やその他の家族法を専門に扱うクライントップ& ルリア法律事務所で家族法専門の弁護士として勤務後、2022年9月に『宮本直子法律事務所』を開設。
宮本直子法律事務所
735 Bishop St, Ste. 310, Honolulu (Dillingham Transportation Bldg.)
TEL 808-444-7890
E-mail: info@miyamotohawaiilaw.com
https://www.miyamotohawaiilaw.com/japanese-page
※実際のアドバイスは個々の状況により異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2023年4月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。