『「NO」と言える日本人』という本が発行されたのは1989年のこと。記憶にある方も多いでしょう。この本が出た頃は日本がバブルの時代で、まだ日本がアメリカや世界相手に強気でいられた時代でした。この数年後にバブルははじけてしまい、2017年の今は全く違う世界状況の中に日本は置かれているわけです。けれども、やはり日本人が「NO」と言えるかはとても重要です。
数年前 、ローカル企業A社が大きなイベントのクラウンスポンサーを探していて、仲介をしたことがあります。 スポンサーをオファーされたのは大きな日本企業のB社でした。A社のアメリカ人が交渉をしたB社の日本人は「I think about」と回答したのですが、これは日本人が「NO」と言いづらい時に使うお断りの言葉です。けれどもA社は前向きに考え中だと判断して、2度目、さらに3度目の交渉へと挑みました。またもや「I think about」と答えたB社の対応に困っていたA社に、たまりかねて、あれは断りの意味だと教えたら、A社はとても気を悪くしてしまいました。私も早めに教えるべきだったのかもしれませんが、交渉を妨げてもいけないし、タイミングが難しかったのです。そのイベントはクラウンスポンサーに穴が開いたまま開催され、沢山の関係者が残念な思いをした出来事でした。
その後、今度は私が大きなオファーをされました。新規で立ち上がる会社の取締役を頼まれたのです。先方は報酬や株のシェア、業務責任等の事柄が書かれた書類を持ってきて、断りづらい状況になっていきました。引き受ければ我が社の収入にもなるし、既にPR企画も受理されていたので断りにくい状況でした。けれども引き受ける気になれなかったので、アメリカ人のコンサルタントを雇い、仲介人からお断りの旨を伝えてもらいました。相手は気を悪くすることもなく、こちらの事情を汲んでくれて、今でも良いビジネス関係をキープできています。
「NO」と言えない時は方法を考えて「NO」と言いましょう。アメリカでは、言うべき時に「NO」と言わないのは、罪な事でしょう。お互いに健全で健康なコミュニケーションを保つにはきちんと相手に気持ちを正直に言うことです。あなたがある程度の地位についているならなおさら、自己認識を持ってアメリカ人とお付き合いをしましょう。
(2017年2月1日掲載)