米国での契約はいかに重要であるか考えてみましょう

 アメリカは契約書にサインしないと物事が進まない国。アパートを借りるのも、不動産の売買も、保険に入る時も、そして、病院にかかるにしても、歯医者で歯をクリーニングしてもらうだけであっても、しょっちゅう契約書にサインする場面に出くわします。
 契約とは、何か起きた時に裁判で訴えられたりしないように、相手からほぼ強制的にサインを求められることの方が多いかもしれませんが、とにかく自分や会社を守るために必要なことなのです。
 例えば、会社に入社する時。会社で働くということは雇用主と契約をすること。会社から渡される契約書に書いてある内容(お給料、福利厚生、勤務時間、実務内容等)を隅々まで見て納得いかない時はちゃんと質問をしましょう。それをしないで勤務が始まってから、態度が悪いとか、気にくわないとかという、上司の感情的な理由でパワハラ的に解雇されても文句は言えないのです。また、雇用主も雇ってからこんなはずじゃなかった…と思っても契約書に書かれていないことは従業員に文句は言えません。
 以前、知り合いの会社で、上司が部下と口論になったあげく、部下に頭を鉄棒で殴られる事件がありました。その会社は暴力を犯した従業員をすぐクビにしましたが、従業員は解雇されたことを不服として訴えました。裁判沙汰になって何年も揉め、従業員に非があるにも関わらず、その会社は賠償と弁護士費用のために10万ドル以上も使わねばなりませんでした。そんなことが起きてしまうのも雇用契約の内容に不備があったためです。
 また、話は変わりますが、私の仕事のようにアイデアを提供する職種の人は気をつけた方がいいことがあります。ミーティング時にはプレゼンを用意して、アイデアを提案するでしょう。ところが、相手によってはこちらの提案内容を競合他社に持って行き、その会社にこちらが提案したアイデア通りの企画をやらせてしまう酷い人がいるのです。これは当然私の落ち度だったのですが、こちらのプレゼテーションを相手が気に入っていたら、そこで仮契約をするべきだったと思います。
 そして、その仮契約書ですが、相手が日本人でも英語がマストです。ここはアメリカなので、日本語の契約書はアメリカでは通じないからです。日本語による補足ぐらいは用意してあげるべきと思いますが、この辺りの段取りは本当に慎重かつ厳重にやらなければなりませんね。
 日本人同士の決め事だとついつい、お茶を飲んで和気あいあいと契約に触れずに終わってしまいがちですが、いつも自分側を守ることを先立ってやっておくのは当たり前の事です。日本人の相手に契約書を出すと「信用してないの?」と思われるかもしれませんが、お互い物事を書面で記録しルールを共有すれば、さらにより良い関係が築けると思います。皆さんも実行してみましょう。

(2017年1月16日掲載)

Booking.com

「梨本昌子のちょっと言ってもいいかしら」のコンテンツ