ウクレレは、多彩な音色を持つ実に魅力的な楽器だ。巧い人の手にかかれば、バンジョーに聞こえたり、ギターのように響いたりする。一方、並みの人間が弾くと、ベートーベンの楽曲であろうと、メタリカのギンギンハードロックであろうと、どれもみなハワイアンサウンドに聞こえてしまうのは不思議だ。もともとはポルトガル移民が持ち込んだマチェーテと呼ばれる楽器だったのだが、そのゆったりと和やかな音色はいつの間にかハワイ独特のサウンドとして知られるようになった。だからどんなにがんばっても、そしてそれがたとえイベリア半島の民謡であっても、ウクレレでポルトガルなサウンドを出すのは無理だろう。
長年愛されていたハワイアンフードの老舗「オノ・ハワイアン・フード」がクローズしたのは残念だった。しかし、その跡地にオープンした『ダ・オノ・ハワイアン・フード』の韓国人オーナー、レア・パクさんとポクイ・キムさん姉妹は、ウクレレのそういう背景と似た感じで老舗の味を再現することに成功。ハワイアンな味の調べを見事に奏でている。その理由はおそらく、元の店の調理師さんたちを引き続き雇ったこと、そして前オーナーの協力を得ていることにもあるだろう。
メニューをひと目見て僕は値段が高くなっていることにびっくりした。だがよく見れば、総体的に1ドル弱の値上げで、新しく加わったコンビネーションメニューのいくつかが高かったことが驚きの原因だった。店内は、以前壁一面に貼られていた地元や海外のセレブたちの写真がすっかり外され、カピカピに乾き切ったレイやハワイアンメモラビリアもなくなって、清潔感が漂う。ところどころにアートが飾られたアボカド色の壁に囲まれた空間に、それとは対照的なオレンジ色のテーブルが配され、アップスケールなローカルレストラン風だ。値段もインテリアも変わったが、2・3皿試した後は、僕はその馴染みのある味わいに、ちょっぴり豪華に改装された元の店にいるような気分にすっかりなってしまった。
メニューも以前とあまり変わりなく、ハワイアンが圧倒的。カルアピッグ、ピピカウラ、ショートリブのピピカウラ、ラウラウ、チキンロングライスなどをロミサーモン、ご飯、ポイ、ハウピアと組み合わせたコンビネーションプレートは$18.90~$29.90。単品ならば$6.90~$18.90。ライスは$2.50、ポイは$4.90だ。
フアカイエッグスープ($5.90)、牛肉ベースのソルトミートウォータークレススープ($19.90)、タコまたはアヒのポケ(各$9.50)、またビーフシチュー、トライプシチュー、ビーフカレー(各$7.90)など人気の定番アイテムも引き続き毎日提供されている(但し、ビーフシチューだけは火曜日のみビーフカレーとなる)。豚バラをパリパリに揚げたレチョンカワリ($12.90)や揚げマンドゥ($10.90)といったローカル料理が新しく加わったのは、特にロコたちにとってうれしいチェンジだろう。2人連れなら、コンビネーションプレート1つと単品を2・3皿注文するのがおすすめ。
料理はどれも上出来だった。オーナーこそ代わったが、僕が子供の頃家族といっしょに楽しんだ、あのオノ・ハワイアン・フードのオーセンティックな味も、ローカルなスタイルも生き続けている。オーナーのキムさんとパクさんはこれまでもハワイでレストランを経営してきた経歴を持ち、また彼女たちのお母さんも、以前リリハのマルキンマーケットでタコポケやアクポケ、ラウラウ、フライドタコなどを作っていたそうだ。どおりで彼女たちはロコ好みの味をよく知っているわけだ。もちろんロコだけでなくビジターの人たちも楽しめるはず。ウクレレで弾けば演歌もハワイアンに聞こえるように、彼女たちはマンドゥさえもハワイアンなエクスペリエンスにしている。
◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。
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(2018年2月1日掲載)
※このページは「ライトハウス・ハワイ 2018年2月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください