キリン・レストラン

僕は自分のことを迷信深い人間でないと考える。なぜかというと、例えば毎年妻が交通安全のお守りを買ってくれるのだが、それにもかかわらず、人一倍事故に巻き込まれることが多い。お守りには、少なくとも僕を守ってくれるパワーはなさそうだ。そう言うと、もっとひどい事故になっていたかもしれないから効果があったのだ、と彼女は反論する。ということは、加害者もお守りを持っていたならば、事故は起きなかっただろうし、彼も賠償金を払わなければならないハメに陥らなかったはずだ。もしかしたら僕のお守りのおかげで最悪の事態を避けられたのかもしれない。それなら彼はお守り代の半分を払ってくれるべきではないか、なんて思ったりする。
 
迷信を信じない僕も、数字の8が好きなことは認める。電話番号にもEメールアドレスにも8を使っているくらいだ。8は僕にいいクライアントやメディア、セレブリティと仕事をする機会、このフードコラム、8年間連れ添ってきてくれた寛大で優しい妻など、素晴らしい幸運を数多くもたらしてくれた(但し、アーリーリタイアを狙ってギャンブルするときだけはなぜか効力がない)。
 
中国人は8にすごくこだわる。そして、8のほかにも中国の人たちが福や幸運をもたらすと信じるものがたくさんある。例えば神話に登場する霊獣“麒麟”は、幸運、守護、繁栄、成功、長寿のシンボルとされている。この伝説の獣の名を冠した『キリン』レストランを見ていると、迷信を頑として信じない僕にさえ、もしかしたらアリなのかもしれないと思えてくる。
 
ホノルル・モイリイリ地区で30年に亘ってローカルや旅行者に愛されてきたこの老舗中華料理店は、最近、経営が移行したことを機に、ベレタニア通りの店舗からハイアット リージェンシー ワイキキ ビーチ リゾート アンド スパ エバタワー地下1階の、以前シーフード・ヴィレッジがあったスペースに移転オープンした。テーブルやフォレストグリーンのテーブルクロス、チェリーウッドのウォールアート、什器備品、彫刻、壷、プラントなど従来のものをそのまま活かした店内は、もとの雰囲気を再現した空間。スタッフも、総料理長以下、給仕長、3人のウェイターの計5人が引き続き勤務し、長年愛されてきたキリンの伝統と行き届いたサービスを継続している。

点心メニューから

 

雰囲気もさることながら、僕にとっては、活ダンジネスクラブ、メインロブスター、海老、ビッグアイランドアバロニといった新鮮な海の幸を、ショウガと青ネギ、ブラックビーン、塩胡椒など異なった味付けと調理法で作ってもらえる看板のシーフード料理が変わらず提供されているのが特に感激だった。

スターターには、各種前菜やサラダ、そしてカニ身のクリームコーンスープ、干し貝柱スープ、海老と豚のワンタンスープ、 酸辣湯など数種類以上のスープが用意されている。シーフードメニューは、前述のほかにソルト&ペッパーカラマリ(ピリ辛イカの唐揚げ)、ハニーウォルナッツシュリンプ(海老とクルミの蜂蜜ソース)、鮮魚のショウガと青ネギ蒸し、牡蛎フライ、アワビと野菜の煮込みなどがある。北京ダック、クリスピーチキン、ピリ辛カンパオチキン、広東風テンダーロインビーフ炒め、モンゴリアンビーフ、ソースしたたる無錫風フライドスペアリブなどの肉料理や、麻婆豆腐、サイシン(菜心)の中華炒め、空芯菜の豆板醤炒めなど豆腐・野菜料理のセレクションも充実している。ジュージューと美味しそうな音を立てながらダイナミックに供される牛肉や貝類のプラッターは、やはり御飯か麺類がほしくなる。

素晴らしい見栄えとはいえないが、手で食べて、最後は指まで舐めたくなる絶品“カニの黒豆ソース”

 

口コミで評判がどんどん広がり、この店はきっと大儲けするだろう。だから、伝説の麒麟は少なくとも新オーナーにとってラッキーな霊獣にちがいない。そして繁盛すれば、美味しいキリンの中華料理(僕がほぼすべての料理にかける、ちょっぴりピリ辛でニンニクのよく効いた自家製辣豆板醤を含めて)をこれからもずっと楽しむことができるから、どうやら麒麟は迷信を疑う僕にさえ幸運をもたらしてくれるようだ。

 

◎ キリン・レストラン / Kirin Restaurant
ハイアット リージェンシー ワイキキ ビーチ リゾート アンド スパ エバタワー地下1階
2424 Kalakaua Avenue
☎ 808-942-1888
▶ 営業時間:毎日 11:00am〜2:00pm(ランチ)、5:00pm〜10:00pm(ディナー)
▶ 取扱クレジットカード:ビザ、マスターカード、アメリカンエキスプレス、JCB

ショーン・モリス

ショーン・モリス◎ マーケティング会社社長。ハワイ随一のグルメ通として知られている食いしん坊。

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(2017年12月1日掲載)

※このページは「ライトハウス・ハワイ 2017年12月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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