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モアナルア・ガーデン(この木なんの木)

日立のCMに使われ一躍有名になった「この木なんの木」。モデルとなったモンキーポッドの大木があるのがハワイ・オアフ島ホノルルの西端に位置する「モアナルア・ガーデン」だ。先祖の遺志を受け継ぎ、モアナルア・ガーデンの経営を行うジョン・デーモン社長に話を伺った。

先祖が遺したこの庭園をそのまま残すのが私の役目

モアナルアガーデン社長ジョン・デーモン氏「最も心に残るCMは何か」と聞かれると、日本人の多くは「この木なんの木」のメロディーを口にすることだろう。
 
日立という会社のイメージを決定したと言っても過言ではない印象的なCM「この木なんの木」の主役は、ワイキキから車で約20分、ホノルルの西端に位置するモアナルア地区にある「モアナルア・ガーデン」に堂々とそびえるモンキーポッドの大木である。
 
「実はこの木は、このガーデン内で一番大きな木というわけではないんです」と語るのは、モアナルア・ガーデンのジョン・デーモン社長だ。「ただこの木の幹や枝の広がり方、葉の付き方などのバランスが非常にきれいな上、1本だけぽつんと立っていて周りに何もないというロケーションが好まれて、(「この木なんの木」の)CM撮影に選ばれたのですよ」

約24エーカーの土地に緑の芝生がどこまでも広がるモアナルア・ガーデンが、実は私有地である事実を知る人は地元住民でも意外に少ない。

公園のように広々として清々しいこの庭園には、100年以上の樹齢を持つ大きな木が何本も木陰を提供し、地元住民の憩いの場となっている。住宅がびっしりと立ち並ぶ町の中で、この土地だけが広い庭のように残されている理由は、デーモン社長の先祖がここを庭園として残すことを望んだためだという。

ハワイの王族から譲り受けたモアナルア・ガーデン

モアナルア・ガーデン
「地元の人には、残念ながら市か州が運営する公園だと誤解されているようですが(笑)、ここは私の先祖がハワイの王族から譲り受けた土地の一部です。先祖の死後にトラスト(信託)として遺されたものを、2006年に子孫である私が買い取り、ビジネス化しました」とデーモン社長は語る。

彼が言う「先祖」とは、米東海岸マサチューセッツ州からハワイ王国に渡った宣教師の息子としてホノルルで生まれ育ったサミュエル・ミルズ・デーモン氏を指す。サミュエル氏は、現在のファースト・ハワイアン・バンクの前身となったビショップ・アンド・カンパニーで、後にビショップ・ミュージアムを設立したチャールズ・ビショップ氏のビジネスパートナーとして銀行経営を行っていた。

ビジネス界で大成功を収めたサミュエル氏は、ハワイ王族の信頼を得て、ビショップ氏の妻バニース・パウアヒ王女の逝去後、現在のモアナルア・ガーデンを含む山から海までの「アフプアア」を相続。その後は政治家としても活躍したハワイ史上における重要人物だ。

サミュエル氏が逝去した1924年、モアナルアの土地は子孫を始めとする理事が管理するトラストと化した。その後、2006年にトラストが解消され、現在は学校や工業団地、住宅が並ぶ一族所有の土地と共に、ファースト・ハワイアン・バンクなどのビジネス売却も決定。その際、子孫の一人であったジョン氏が「モアナルア・ガーデンは一族に残したい」とこれを購入し、社長に就任したという経緯で今に至っている。

新しいビジネスモデルで商業的成功を図る

モアナルアで生まれ育ったジョン・デーモン社長は、プナホウ・スクールをバラク・オバマ米大統領の1年後に卒業した後、ニューヨーク大学に進学。卒業後はハワイに戻り、レストラン経営などのビジネスを行った。

日立のCM「この木なんの木」が初めて撮影されたのは、彼がまだ10代の少年だった1973年のことで、彼の心の中にも日本人に愛される木が深く印象に残った。2006年にトラストの資産が売却されることが決定した際、家族の中でモアナルア・ガーデンの存続に興味を示したのは、デーモン社長ただ1人だったという。

「当時、モアナルア・ガーデンの経営および管理にかかっていた費用は年間約60万ドル(約7500万円)でした。入園は無料でしたから、年間60万ドルという大金をそっくり失っていたわけで(笑)、継ぎたいと話すと兄弟に驚かれました」とデーモン社長は当時を思い出す。「先祖の遺志と一族の歴史を存続するため、モアナルア・ガーデンを今までと同じ形で残す決意はしたものの、毎年大金を失っているだけではビジネスとして成り立ちません。9年間悩み抜いた末、入園料を設定することに決定しました」

eheu-autumn-2015-p39-pic2015年から施行された入園料は大人1人3ドル。駐車場隣にあるギフトショップで支払う仕組みだ。現在は毎日最低でも600人、多い日では1000人の日本人観光客が訪れ、ようやく経営コストを賄えるようになった、と社長は話す。
 
現在は入園者の8割以上が日本人。残りは地元ハワイの住民で、2014年にホノルルのカーク・コールドウェル市長も、モアナルア・ガーデンで個人的な市長就任パーティーを開催した。
 
ハワイ王族の縁が深いモアナルアは、一時パウアヒ王女のいいなずけでもあったカメハメハ5世(プリンス・ロット)が愛した場所でもある。
 
カメハメハ5世は、カラカウア王の前にフラ復興を試みた人物。彼が別荘として利用したコテージは、モアナルアの他の場所からガーデン内に移され、広々とした緑の芝生とモンキーポッドの木々を見渡す場所に佇む。毎年7月には、彼を称えるフラの祭典「プリンスロット・フラ・フェスティバル」がガーデン内で開催され、多くの観客を集める。

現在改築中のこのコテージ、「改築終了後は、一部を一般に公開する予定です」とデーモン社長は話す。モアナルア・ガーデンのシンボルである広々とした土地とモンキーポッドの木はこのまま残し、息子たちに託す予定だ。「ビジネス面での将来のビジョンとしては、コンサートやパーティーなどのイベントの他にも、ガーデン内で結婚式を挙げられるような施設にしたいと思います。なんと言っても、あの木(日立の木)は“幸せの木”ですし、皆に愛される木ですからね。そんな木の下でウエディングを挙げて、一生の素晴らしい思い出にしていただければ、と思っています」

ジョン・P・デーモン / John P. Damon

◎ハワイ・オアフ島ホノルルのモアナルア地区で、パウアヒ王女からモアナルア一帯を相続したデーモン一族の子孫として生まれ育つ。プナホウ・スクールを卒業後、ニューヨーク大学に入学。卒業後はハワイに戻り、ビジネス界に入る。レストラン経営を経て2006年にモアナルア・ガーデンを買い取り社長に就任。先祖の遺志を継ぎ、日本人観光客や地元ハワイの住民に愛される庭園を経営管理する。

◎ モアナルア・ガーデン / Moanalua Gardens
ハワイ・オアフ島ホノルルのモアナルア地区にある24エーカーの庭園は、日立のCM「この木なんの木」に使われたモンキーポッドの大木がある場所として有名。毎年7月にはフラの祭典「プリンスロット・フラ・フェスティバル」も開催される。
2850A Moanalua Road, Honolulu
☎ 808-834-8612(Gift Shop)
▶ Webサイト:http:// www.moanaluagardens.com

(‘Eheu Autumn 2015号掲載)
(Text: Yoshiko Karson / Photos: Akira Kumagai)

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