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ハワイの道から辿るヒストリー:カピオラニ・ブルバード

王国の繁栄を陰で支えた王妃・カピオラニ

市民の憩いの場、カピオラニ公園の入り口に建つクィーン・カピオラニの銅像。

王妃の名を冠した大通りが、ホノルルのダウンタウンからダイヤモンドヘッド方向に長く続いています。その名は「カピオラニ」。カウアイ島最後の王「カウムアリイ」の孫にあたります。
 
1874年(明治7年)2月、カピオラニの夫君カラカウアは、議会の選挙によりハワイ王国7代目の王に推挙されました。カピオラニとの結婚から10年後のこと。それから遡ること80年ほど、諸島統一を目論んでいたカメハメハはハワイ島からマウイ島を攻略した後、大軍を率いてワイキキからカハラに上陸。1795年4月にヌウアヌパリの絶壁で敵を攻め落とし、ハワイ島からオアフ島までを手中に収めます。
 
その後2回にわたりカウアイ島に戦いを挑みますが、悪天候と疫病に阻まれ、2度とも断念。この時カメハメハの征服を免れたのがカウアイを支配していたカウムアリイでした。
 
しかし、1810年にはこれ以上大王に抵抗できないと判断し、オアフ島を訪れ和議を申し入れます。カメハメハ大王はそれを快く受け入れ、カウアイとニイハウ両島の支配を生涯カウムアリイに任せ、ハワイ8島全てが正式に王国の領土になりました。
 
緑濃い島カウアイ最後のアリイ(首長)の孫娘がカピオラニですので、カメハメハの血筋ではないものの、王家の血の流れている女性の一人です。
 
ハワイ王国が砂糖産業の隆盛で繁栄するなか、カピオラニ王妃は1887年に、カラカウア王の名代として、英語が堪能だった義理の妹リリウオカラニ王女を同行者に米国から大西洋を渡り英国を訪問。ビクトリア女王の在位50周年を祝うゴールデンジュビリーに参列し、カンタベリー大司教の司式で行われたウエストミンスター寺院での式典では英国の皇族と共に前方の長椅子に座すなど、厚遇を受けています。自身はハワイ語のみを話されたようで、カラカウアの妹で後に8代目の女王になるリリウオカラニの通訳を介して会話を進めたと伝えられています。
 
さて、ホノルルのダウンタウンからダイヤモンドヘッド方向に続くサウス・キング通りは、20世紀初めに建てられたホノルル市庁舎「ホノルル・ハレ」と、宣教師の歴史を残すミッションハウス博物館の間を通り過ぎると、漁網を繕うネイティヴハワイアンの像を真ん中にして二手に分かれます。
 
この像を左に見て一方通行を右 手に進むとカピオラニ大通りが始まり、ワード通りと交差してしばらく進むと、年中買物客で賑わうアラモアナセンターの山側を通り、ハワイコンベンションセンターの角で、夫君の名を冠したカラカウア通りと交差。
 
マノアの谷に広がるハワイ大学のキャンパスに通じるユニバーシティ通りを過ぎてワイキキの山側をさらに東に進み、キング通りと再度、合流して終わります。
 

カピオラニ王妃のイラスト
www.shintakahashi.com

王妃の名はホノルルの幹線道路ばかりでなく、他にもいくつか残されています。毎年12月に行われるホノルルマラソンの走者が最後の力を振り絞って走り込むゴール地点、カピオラニ公園もその一つ。一般にも良く知られているハワイアンの名曲、ダイヤモンドヘッドをテーマにした『カイマナヒラ』にも歌われているように、カラカウア王の時代、この広大な緑の敷地は競馬場として使われていました。マラソンのゴール地点には王妃の像が建てられていますが、王国繁栄の時代を作りながらもサンフランシスコで客死した夫君を思うがごとく、緑の芝生とクイーンズビーチの先にどこまでも広がる太平洋の彼方に手を差し伸べているようにも見えます。
 
王妃は女性の福祉向上にも奔走し、ハワイ各地でバザーやルアウを催して資金を集め、1890年に産院を開設。その施設は女性の子供のための大病院に発展し、今でも多くの人々が恩恵にあずかっており、H-1フリーウェイのプナホウ出口前方、セントラルユニオン教会の並びにあります。

カピオラニは、天国のアーチ、もしくは王家のアーチを意味し、王家の尊厳を空に広がる七色の虹に例えて表現しているかのごとく、美しく気品のある名です。
 
王妃は、王国崩壊後まだハワイが共和国として存在していた1899年、米国に併合される1年前の6月に64歳で亡くなり、ホノルルのマウナアラにある王家の墓に、カラカウア王と共に葬られています。
 
(Text: Masakazu Asanuma / Illust: Shin Takahashi)
(‘Eheu Spring 2016号掲載)

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