ハワイ王国最後の王位継承者・カイウラニ

ハワイの道から辿るヒストリー:カイウラニ・アベニュー

(Text: Masakazu Asanuma / Illust: Shin Takahashi)

クヒオ通りとカイウラニ通りの交差点の三角公園にひっそりと建つプリンセス・カイウラ二像

英国留学中に母国を失った悲運の人

孔雀を連れた若い女性の銅像が、ワイキキのほぼ中央、クヒオ通りとカイウラニ通りの差点、バス停の前に置かれています。ハワイ王国最後の王位継承権を与えられたカイウラニ王女の像です。このあたりには「アーイナハウ」と呼ばれるカイウラニが住んだ邸宅がありました。
 
カイウラニは1875年10月、カラーカウア王の末の妹にあたるリケリケ王女と、スコットランド人アーチボルト・クレグホーンの一人娘として生まれました。カラーカウア王は姪の誕生を心から喜び、ホノルル中、全ての教会の鐘を鳴らして祝ったとか。カラーカウア王の戴冠式に出席するなど公的な生活をしながらも、子馬を乗り回したり、幼少のときを楽しく過ごしたカイウラニは、将来の女王としての教養を身に付けるべく1889年、13歳の若さで渡英。汽船と大陸横断鉄道を乗り継ぎ、更にニューヨークから大西洋を渡りリバプールへ。ホノルルからロンドンまでの道のりは1カ月余を要しました。家族や友人から離れ、生まれ育った南の島を後にしての長旅に、まだ幼い王女はさぞかし不安を覚えたことでしょう。しかし、英国留学中の王女に対する将来への期待とは裏腹に、母国のハワイ王国はその末路に差し掛かります。伯父カラーカウア王は、西欧人の砂糖業者を中心とした経済界の人たちに翻弄され王権を揺るがされ、その権力を弱めていきます。小さな王国に見切りを付け、米国への併合を求める親米派の動きが年々強まり、王権を脅かし始めたのでした。王は体調を崩し、1891年1月サンフランシスコでの静養中にこの世を去ります。カラーカウア王の棺がホノルル港に着くや否や、リリウオカラニは兄の葬儀を待つことも許されず、即刻ハワイ王国8代目の女王になるべく宣誓を行いました。その女王も2年間在位した後、米合衆国への併合を求める勢力に屈するように、王権を放棄せざるを得なくなり、約1世紀弱続いたハワイ王国は終わりを告げ、後継者として指名されていたカイウラニが女王になることは叶いませんでした。カイウラニは1897年に帰国の途につき、サウサンプトンからニューヨークに到着した後、王国の復活を米国政府に直訴していた、ハワイ王国最後の女王であった伯母リリウオカラニにワシントンで再会を果たし、クリーブランド大統領にも謁見しています。ホノルル港に着いた王女は、その足でダウンタウンの丘の上にあるマウナアラの王家の墓に、亡き母リケリケを訪ね、懐かしいワイキキの家に8年ぶりに戻りました。その後ハワイ島のパーカー牧場滞在中に体調が急変。ワイキキに戻り、23歳の短い生涯を終えました。孔雀を連れた王女の銅像はなぜか悲しみを帯びた様子にも見えます。
 

カラーカウア通りとプリンセス・カイウラニ・ホテルの角から始まるカイウラニ通りは、王女の像が置かれている所から山に向かって狭い道となり、クヒオ通りの先へと続いていきます。そこからは旅行者が多く通る雑踏を離れ、コンドミニアムに囲まれた静かなたたずまいの住宅地へと変わります。そして、ダイヤモンドヘッド方向からカイウラニ通りに接する最初の道は、王女の父の姓から名付けられたクレグホーン通り。その次の小道はトゥシタラ通り。『宝島』など、多くの小説を残したスコットランド人作家ロバート・ルイス・スティーブンソンが家族と共にカイウラニの家に逗留した時期がありましたが、トゥシタラはサモア語で語り部や作家のこと。サモアの人たちはスティーブンソンをそう呼んでいました。通りは更にアラワイ運河へと続きます。運河の遙か先には緑豊かなマノアの谷と、高くそびえるコオラウ山脈の峰々が絵のように見え、運河の向こうから貿易風が心地良く吹いてきます。ホテルやショッピングセンター、長く広がる白いビーチから風景が一変。旅行者を見かけることのないワイキキのもう一つの光景が広がります。孔雀が飼われ、幼少のカイウラニ王女が育った邸宅の名アーイナハウは、涼しい土地を意味します。コオラウの山々からマノアの谷を吹き降りてくる風を受け、さぞかし居心地の良いところだったのでしょう。

余談になりますが、カイウラニはワイキキの海岸でサーフィンを楽しんでいたのかもしれません。ビショップ博物館に、コアの木で作られた王女のサーフボードが今でも保管されています。
 
(‘Eheu Spring 2017号掲載)

※このページは「‘Eheu Spring 2017」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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