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ハワイ発のファッションブランド「マナオラ(Manaola)」

マナオラ
Photo: Michael Vossen, Vision Horse Media, Poerava Media

伝統的なハワイアン・アートから生まれる モダン・ファッション「マナオラ」。

(Text: Maiko Izon / Photos: Linny Morris)

マナオラ毎日当たり前のように私たちが身に着ける衣服。出勤時にはビジネススタイル、休日にはカジュアルスタイル、自宅ではルームウェアなど、普段何気なく着ている衣服を深く意識することはあまりないかもしれない。見た目の良さや機能性だけでなく、実は意識的にその時の「自分」に合わせて着る服を選ぶ方が有効的と、考えたことがあるだろうか?ハワイ島コハラコースト出身、30歳という若さでハワイのファッション業界の常識を覆すようなブランドを生み出したデザイナー、マナオラ・ヤップから、ファッションの真髄を教えられた。
 
物腰が柔らかく、優しいトーンで話す彼の笑顔は、新進気鋭のデザイナーとして躍進する強い眼力と、生まれ育った環境に真摯に身を置き、現在の運命に身を委ねる豊かな包容力が印象的だった。名実ともにハワイのフラ界と音楽界をリードする一家に生まれ、幼い頃から伝統的なハワイの文化活動に携わってきた彼にとって、初めてのファッションとの出会いは、フラのコスチューム作りだったという。フラのルネッサンス運動に積極的だった母や叔母に師事し、ハワイの伝統的な衣装作りを始め、型紙作りや裁断、縫製などコスチューム作りの基本を学んだ。

マナオラ
Photo: Michael Vossen

ハワイに古くから伝わる神話や伝説などを、ハワイを訪れる旅行者に分かりやすく伝えるために、芝居的な要素を盛り込んだフラ・ドラマのコスチュームは、伝統的なフラのステージ衣装とは一風違い、モダンなスタイルを取り入れたデザインだ。伝統的な不織布「カパ」や竹を使用してスタンプを作り、カパに模様を施す「オヘカパラ」、また自然の素材を使用する染色法「ヴァイホオルウ」などを取り入れながら、スタイルにこだわりを持ち、すべて手作業で作り上げていく。ヤップ家のコスチュームは、ショーで踊るダンサーたちはもちろん、観客たちをも魅了し、次第に普段着やイベント出席の衣装として着たいという人からもオーダーが舞い込むようになった。
 
「コスチューム作りを通して母から教わったのは、作り方だけでなく、着る人に衣装が与えるスピリチュアルな影響力。衣服は着る人の”マナ(精神)”を宿す場所として、その人のマナを育て、洗練し、守ることができるという大きな意味があることを学びました。本来、私たちは身に着ける物によって、エネルギーを引き寄せたり、跳ね除けたり、見た目のデザインだけでなく、使用している素材などさまざまな要素が影響して、自身全体の陰陽のバランスを保つことができるんです。古代のハワイアンたちは、そういったネガティブとポジティブなエネルギーをオヘカパラ※の柄の中でバランスを取ることを知っていたので、こうした独特なパターンが生まれました。人にとって大切な”衣服”へのコンセプトを学ぶことで、さらにファッションに興味を持つようになりました。着る服がいかにその人に影響を与えられるか、また見る人を惹きつけられるか。こういった衣服の力は、現在すでに失われつつある見解です。ですが、混沌とした現代社会の中、本人の潜在意識やスピリチュアリティー(霊性)、生命力をいかに引き出せるかということを考えたときに、服を着ることによって自身の内面や対人関係を守る、養う、そして自分自身や周りの人々とが繋がっていく、といった本来の衣服の役割を取り戻し、人々に伝えることできたら…。そんな思いが形になったのが、僕のブランド”マナオラ”です」。
 
※オヘカパラとは、オヘ(竹)で作るカパラ(スタンプ)という意

マナオラのオヘカパラの道具
「オヘカパラ」(ハワイ語:オヘ=竹、カパラ=スタンプ)バンブー・スタンプと呼ばれ、古代ハワイアンの時代から伝わる染色技法。「マナオラ」のテキスタイルのパターンとなるオヘカパラは、現在でもマナオラ自身が山へ足を運び竹を採取し、彼のアトリエがあるハワイ島にて彫り込んで作り上げる/Photo: Vision Horse Media

古代ハワイアンからの「ファッション」のあるべき姿を解く

(Text: Maiko Izon / Photos: Linny Morris)

マナオラ_婦人服
Photo: Michael Vossen

初めて作ったクチュールオーダーは、ハワイのグラミー賞と呼ばれるナ・ホク・ハノハノアワードに出席するアーティストの衣装だった。当時、多くのハワイアン・ミュージシャンやフラ・ダンサーたちが着ることのできるイブニングドレスは、アロハウエアのみ。ムームーやアロハシャツではないハワイらしさとモダンな要素を織り交ぜた「マナオラ」のイブニングドレスは、観衆の注目を浴び、イベント直後から、問い合わせが殺到した。
 
「当時、竹にパターンを彫り込むオヘカパラ作りはもちろん、縫製もすべて自分で手縫いで仕上げていました。母から教わったもうひとつの大切なことに、相手に応じて、どういったパターンがその人に必要かを考えて作るというのがありました。例えば、どんな人でも男性的な部分と女性的な部分があります。物腰が柔らかな人が人前に出るときには、少しアグレッシブな柄を盛り込んだテキスタイルにして、その人の柔らかなエネルギーを周りの注目から守る柄やデザインにする。そういった、作り手の僕が相手を個人的に良く知っているということが非常に重要なコンセプトだったのです。なので、友人からシルクスクリーンでテキスタイルのプリントの話を持ちかけられたときは、ちゅうちょしました。作る相手を知っているからこそ生まれるプリントやデザインから、大量生産型の生地にしたときにスピリチュアルなエッセンスが失われてしまうのではないかと考えると怖かったんです。結局、試しに一度だけと説得され、できあがった生地は、僕が求めているスピリチュアリティー(霊性)が感じられ、母も納得した素晴らしい出来でした。そこから、大衆へ向け自分の思いを伝えるためにさまざまなコレクションを作り始めました」。

マナオラ_ドレス2014年5月、ハワイシアターでのファッションショーを皮切りに、クチュールはもちろん、メンズ、ウィメンズの既製品、ホームコレクションなどデザイナーとしてのマナオラの才能が一気に開花した。同年12月の正式なブランドの立ち上げからわずか2年、彼が手掛けたテキスタイルのパターンとデザインの数は300を超えるという。一般的には、1回のファッションショーでデザイナーが発表するのは1シーズン12デザインほどというから、デザイナーとしてこの2年の間にいかに常識を覆すほど多くのデザインを発表してきたかがわかる。
 
現在もオヘカパラはマナオラ本人が山に竹を採りに行き、自分でパターンを削り、テキスタイルデザインとしてデジタル化する。
 
「幼い頃から衣装作りや楽器、アクセサリー作りで親しんだ植物や山、そして、鳥や風、海などさまざまな要素から毎日インスピレーションを受けています。オヘカパラの模様には特に伝統的な決まったパターンや意味というのはなく、作り手の感性がそのまま連続した幾何学模様として表現されるのが基本です。僕が描く多くのパターンは、ストーリーがあり、それぞれのコレクションを形作っています。例えば、この”マウナプリント”は、マウナケア山からインスピレーションを受けた山の三角の中に、4つの三角から成り立っているデザインです。この4つの三角がマウナの四姉妹を表しています。長女のポリアフは雪の女神、その下のヴァイアウは湖の守り神、そして霧の女神のリリノイ。四女のフアラライ山に住むカホウポカネは雷の女神で、ララヒラヴァの雲を集め、叩いてカパを作り、姉妹のために作った純白のカパを山肌に広げる役割を担っていてファッションの女神とも呼べます。また、2つの大きな三角を合わせた大きなダイヤモンドは、太陽や水などの森羅万象を司るカネ・ホアラニとハワイの夏を意味するカウヴェラの自然界の2つの大神を表し、すべての自然を表現したパターンになっています」。

ハワイの神話や伝説を熟知するマナオラだから作り出すことができるパターン

マナオラ_創始者_デザイナー
MANAOLA
「マナオラ」創始者&ファッションデザイナー。1986 年12 月25 日生まれ、ハワイ島コハラコースト生まれ。ハワイを代表するクムフラ、ナニ・リム・ヤップの息子として幼い頃からフラ、衣装やアクセサリー、楽器作りを学び育つ。コスチューム作りを通して伝統的なハワイアン・アートを極める中、モダンな要素を取り入れた次世代のハワイアン・ファッションを生み出し、「マナオラ」を始める「オヘカパラ」(ハワイ語:オヘ=竹、カパラ=スタンプ)バンブー・スタンプと呼ばれ、古代ハワイアンの時代から伝わる染色技法。「マナオラ」のテキスタイルのパターンとなるオヘカパラは、現在でもマナオラ自身が山へ足を運び竹を採取し、彼のアトリエがあるハワイ島にて彫り込んで作り上げる

幼い頃からハワイの神話や伝説に慣れ親しみ、熟知しているマナオラだからこそ作り出すことができるパターン。またそこに若手デザイナーらしい手が加えられ、「もしもハワイ王朝がまだ実在したら、世界中を旅するための王族の洋服としてどんなデザインを作るだろう」といった個性的な発想から、ヨーロッパやアジア各国の情景を思い描いて作り上げられるモダンなデザインが盛り込まれる。ハワイ文化に深く携わる人々だけでなく、ファッション感度の高い若者をも魅了している。その魅力はすでに日本のみならず、韓国や中国などアジア各国にもファンが増え、日本での路面店出店も密かに進行中とのこと。
 
「ブランドを立ち上げてからのこの2年は、信じられないほどブランド自身が成長を遂げました。これは私自身の実力ではなく、私がマナオラというブランドを作るべくして生まれ、このブランドが世の中に伝えたいことを形にする役目を担っているといった感覚です」。
 
「天職」とはまさにこういうことを言うのかもしれない。そんなふうに感じるほど、彼の歩んできた人生は、今彼が歩もうとしている未来へ向かうべくしてあるようである。古代ハワイアンから託された運命を担い、「ファッション」のあるべき姿を、これから私たちに見せてくれるだろう。

(’Eheu Spring 2017号掲載)

※このページは「’Eheu Spring 2017」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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